「きつい」「汚い」「危険」の3K+「稼げない」「結婚できない」の5Kと言われ、中高生が将来つきたい職業トップ10にも入らないのが、残念ながらいまの日本の農業です。小規模・家族農業はとりわけ「時代遅れ」とみられています。農政でも、競争力強化、法人化、農地の集積・大規模化が叫ばれて、「小さな家族農業はどうぞ消えてください」と言わんばかり。ところが世界では、小規模・家族農業こそが持続可能な開発目標(SDGs)と持続可能な社会づくりに大きく貢献すると再評価されています。その背景について、「SDGsと家族農業の関係」「アグロエコロジー」などのキーワードを手掛かりに、中学生にもわかる平易さで解説してくれるのが本書です。
土壌の微生物と人間の健康の関係を見直したブラウン・レボリューション(茶色い革命)、学校の校庭を活用した食育菜園・エディブル・スクールヤード、「家庭菜園」→「市民農園」→「農村での週末農業・農村移住」と、消費者が生産者に近づく「プロシューマー化」など、新しい現象が随所で紹介され、家族農業の潜在力に期待が高まります。
新型コロナ危機により、脆弱なグローバル食料サプライチェーン、ウイルスを拡散しやすい森林破壊や大規模単作農業、感染症に弱い都会の密な環境があらわになり、「持続可能な食と農が支える持続可能な社会」に向け新しい模索が始まっています。
そんな時だからこそ、家族農業によるアグロエコロジーを持続可能な社会の基礎にし、農業を若い世代にとって「あこがれの仕事」として蘇らせ、働き方・暮らし・価値観の転換につなげ、新しい社会の地平を拓いていこう、という筆者の提案に共感。中学生からの若い世代、子どもを持つ親、そして新しい社会を展望するすべての人に読んでもらいたい。
関根佳恵『13歳からの食と農ー家族農業が世界を変えるー』かもがわ出版、2020年
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