10月4~5日にオンラインで開催された第1回世界食料フォーラム(World Food Forum)に、FFPJが団体として招待を受け、会員の若手農林漁業者が参加しました。そのうち、今回は、小川美農里さんの参加体験記をお届けします。小川さんは、福島県で有機農業を実践しながら、農業と医療等をつなぐ活動をしており、7月のFFPJオンライン・シンポジウムにも登壇しています(シンポジウム報告ページはこちら)。
世界食料フォーラムに参加して(小川美農里)
この度、WWFに、オンラインで参加させていただきました。
今回のフォーラムでは世界中の若い起業家、活動家が多く参加し、現在の食農システムが持つ課題の解決のための議論や活動報告や、国連や政府関係者が各国・地域の現状や施策についての報告がありました。すでに10年以上前、私が大学時代からこのようなイベントはありましたが、今回の規模感で行われたのは、国連機関が主催であったこと、オンラインネットワークが充実したことの2点があげられると思います。
環境や食農システムへの関心を持っていること、ライブでインターネットにアクセスできるということが前提になるためか、スピーカーとしての参加者はヨーロッパ、アメリカ大陸が多く、アフリカなどは少なかった印象がありましたが、オンライン無料イベントが行われたことで、多くの若者が参加できる機会が与えられたことはとても素晴らしいと思います。ただ、時差があることから日本時間は夕方から夜中にかけて開催され、参加しづらい時間帯で残念ながら全行程に参加することはできませんでした。
日本で当たり前でも世界では改善リストに
限られた条件下で、ライブでの参加とアーカイブを拝見しての感想としては、まずは、私自身が課題として捉えていることが、世界共通の課題であることを再認識できたことが収穫でした。日本にいると、驚くようなこと(例えば絶滅危惧種の海の生物が当たり前にどこのスーパーの陳列に並び、余剰分は大量に廃棄されていること)があたかも「私達は知りません、今後もこれを続けていきます」と訴えるようなかたちで手に入ることが、国際的にはやはり当たり前ではなく、早急に改善することのリストに入っていました。
気候変動、飢餓に取り組む世界の若者から勇気
次に、世界中のユースの活動を知れたこと、彼らとオンライン上でも出逢えたことはとても頼もしいものでした。現状としての気候変動や食糧の分配問題による飢餓など考えると、気落ちしてしまうのですが、同時にその現状を変えるために活動している20代、30代の若者がいると知れたことで、私も今後も諦めずに活動し続けようと勇気づけられました。
他には、持続可能な食農システム構築のためにいかにテクノロジーを駆使するかが活発に議論されていました。テクノロジーと一言で言ってもその使われ方は様々です。各国政府の政策やマニフェストをユースの視点で分類してまとめてデータを集約することなどは良いアイディアのように感じましたが、一方でFAO/IAEAの主導で行われているRHマッピングを行い家畜動物の生産性を高めるテクノロジーの導入の紹介などもされており、その倫理性や安全性に疑問を抱きました。今後の人口爆発に備えるために必要なのは、今と同じ大量消費を念頭においた科学技術の実用化ではなく、”Act locally, think globally” という言葉に表されるような身土不二の考え方、人間、他の生物、地球の健康などホリスティックにみる視点ではないかと感じました。
インクルーシブネス、ネットワークづくり、地道な活動
他に特記すべきキーワードとして3つ掲げると、1,インクルーシブネス 2、ネットワークづくり 3、地道な活動 です。
1のインクルーシブネスは、「すべての地球市民が対象であること」です。利便性や経済性だけが追求されてきた結果として現在の持続不可能な食農システムができたことを真に反省し危機感を持ち、声の出せない人々の代弁者となるような草の根、若者のNGOをもっとサポートしていく必要があります。もちろん地域・国レベルで施策に反映されるためのはたらきかけが必要です。インクルーシブネスはある意味流行のような言葉で医療や福祉でも使われます(SDGsの「誰も取り残さない」の影響もあると思います)が、ただのキャッチフレーズで終わらせず実際に複雑化した事例を紐解き、解決策を導くためには、各組織の連携が重要です。
2のネットワークづくりは、今回のようなイベントが規模の小さいものでも頻繁にできたら良いと感じました。日本人は言語的な壁が大きいため、事前に食農システムに携わる人達の声を拾って代表者が参加するような形が良いと思います。
今回のフォーラムに参加して、FAOやIFADが世界の食糧問題を今すぐに解決してくれるわけではなく、利害関係の中で社会的意義のあることを順々にしている、という印象を抱きました。参加していた若者たちは純粋な気持ちで世界をよくしようと考えているのが伝わってきましたし、3の地道な活動を、顔の見えるコミュニティレベルで少しずつ取り組んでいき、市民の問題意識を高め活動している人々を勇気づけ、政府への政策提言も同時にしていくのが重要だと感じました。