10月4~5日にオンラインで開催された第1回世界食料フォーラム(World Food Forum)に、FFPJが団体として招待を受け、FFPJ会員団体でJCFU全国沿岸漁民連絡協議会の事務局を務める田中秀幸さんが参加しました。田中さんの参加体験記をお届けします。
はじめに
本フォーラムへの参加を視野に入れて、家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン (FFPJ)は国内において、2021年7月27日に第一次産業分野の青年らによるオンライン会議を開催しました。この会議にはJCFUから2人の青年漁業師が参加・発表しました(発言の要旨や資料はこちら)。その際、私は彼らのプレゼンテーション資料の作成でお手伝いしたことがきっかけで、今回のフォーラム、特に10月4日と5日に行われた青年行動会議(Youth Action Assembly)に参加しました。本来、前述した漁業師二人がこのフォーラムで参加する予定でいたのですが、フォーラムの主催地であるローマとの時差の関係と、不漁が続いていたイセエビ漁が、10月1日に関東に接近した台風16号の時化明けに好漁が期待されていたため、2人とも会議に出席できませんでした。本会議には前期高齢者の私が傍聴しました。これは本会議についての報告と感想です。
青年行動会議について
青年会議は2日間開催され、初日は10月4日の日本時間夜8時から2時間にわたって開始されました。2日目は翌5日の同時刻に行われました。会議は国連FAO職員の司会で、国連の公用語(英語、フランス語、スペイン語、中国語、アラビア語)の同時通訳で行われました。初日は約100名前後のオンライン参加者があり、FAO代表の挨拶の後、インドやヨーロッパのCEJA(欧州青年農業者会議、European Council of Young Farmersのフランス語訳の略語)や中米の青年生産者グループの代表の挨拶があり、主に家族農業、持続的生産、適正市価等についての現状やコメントが述べられました。
その後、フィジーを皮切りに世界各国から青年生産者やNGOによる円卓会議に移りました。フィジーはビデオメッセージで発表し、その後、フィリッピン(2名)、インド、ヨーロッパ、パレスチナ、そしてアフリカに飛んでベナン、コンゴ、モーリシャス、マダガスカル、ブルンジ、南アフリカ、中米に行ってベリーズ、コロンビアそしてカナダからそれぞれ発表がありました。発表内容は農業、畜産、水産分野にわたり、各国の現状・課題等について説明がありました。農業者の組織化、個人農家の孤立化、ネットワークの重要性、新型コロナウィルス対策、インターネットへのアクセス、研修制度、組合・協会の強化、コミュニティ開発の重要性、技術移転の必要性、財政融資制度の強化、市場アクセスの開拓、投資環境、種苗確保、有機農法、伝統農業、資源保全、政治問題、インフラ問題等々の様々な課題の報告と、それに対してどう対処していこうとしているのかといった点について報告がありました。
国際会議等に場馴れして、開発用語を駆使して原稿も読まずに非常に達者に話す青年が結構多く感心しましたが、反面、これらの人たちは果たして本当に現場を知っているのだろうかと疑いたくなるような人たちもいました。また、農村での農業普及の現状について一生懸命説明している人もいました。彼らの発表を聞いていると、日本の若い漁業者にとってこのような国際会議への参加は同時通訳なしではとても難しいと思われました。しかし、フィジーの発表のように動画も入れたビデオメッセージでのプレゼンテーションによる参加もあるので、英語に不慣れな日本の青年からの世界への発信も決して悲観することではないと考えます。最後はFAOの農業専門家がコメントをつけ、そして司会者が締めくくり1日目の会議を終了しました。
2日目は60名前後の参加者があり、前日と同様FAO職員の司会により前日の各国からの発表内容を「課題と解決策」の観点から検討し、家族農業の重要性、青年生産者の増加、都市部と地方の格差等についてコメントし、青年生産者に対する政府からの声明の取り付けの重要性が指摘されました。その後、国連や地域組織等が対処している活動について担当者からそれぞれ報告があり、前日の各国からの発表内容に基づいて行動計画を作成する旨の説明がありました。FAOからは国連「家族農業の10年」(2019-2028年)について、また北アフリカ・中東の地域組織代表からはパレスチナで行われている「新自由主義的経済モデルに代わる青年協同組合」について、さらに「青年農業協同組合」の優位性についての報告がありました。
そして、青年生産者を励ますプログラムの一つとして、国際農業開発基金(IFAD)が支援している「青年農業者による公開書簡コンテスト」の紹介がありました。これは政府に対する要望書のようなもので、青年が積極的に政府に提案できるようにしたものです。例として、フィリピン、インドネシア、パキスタンの青年がこのプログラムについて発表しました。その後、2日目の主目的である参加者による行動計画の作成に入りました。英語圏グループとその他言語グループとの2つに分かれ、次の3つの質問に答える形で行動計画を作成していました。
質問1.健全な人、コミュニティ、環境の実現にむけた農業・食料システムの転換に関わる青年を支援するために必要なこととは何ですか?
質問2.青年が直面する課題の解決につながる能力開発プログラムとはどのようなものですか?
質問3.国連「家族農業の10年」が現場に具体的な成果をもたらすためのメカニズムになるためには、何が必要ですか?
オンラインの会議中に行動計画を完成することは叶わなかったので、完成版の入手方法について現在FAO本部に問い合わせています。各国からの参加者は国連「家族農業の10年」についてよく周知しているという印象を強く受けました。日本では一般の人にはそれほど周知されているとは思えません。この差はどこにあるのでしょうか。おそらく政府の農業政策方針に起因しているのではないかと思わざるを得ません。それに、途上国ではNGOらによる草の根的な活動が浸透しており、そのせいかとも思えます。2つのグループからそれぞれが取りまとめた行動計画について発表があり、主に以下の点について提案がなされました。
- ネットワーク(組織)の構築
- 研修やワークショップの実施、教育の強化
- インフラやプラットフォームの充実
- 魅力的な一次産業の構築
- インターネットへのアクセス
- 財政支援の情報、融資へのアクセスの簡素化
- 政府の支援強化等
最後にFAOの農業専門家からのコメント、そして司会者の閉会挨拶と謝辞で二日間のオンライン会議は終了しました。