10月4~5日にオンラインで開催された第1回世界食料フォーラム(World Food Forum)に、FFPJが団体として招待を受け、FFPJ会員で若手林業家の天野圭介さんが参加しました。天野さんの参加体験記をお届けします。天野さんは、静岡県で自伐型林業を営みながら、農業や微生物を活用した循環する暮らしを営んでおり、2021年7月のFFPJオンライン・シンポジウムにも登壇しています(シンポジウムの報告ページはこちら)。
世界食料フォーラムに参加して(天野圭介)
10月4日、5日に開催された世界食料フォーラム(World Food Forum)に参加しました。コロナ蔓延以降、ウェブ会議の技術が急速に発達し、全世界同時開催となる国際会議に自宅から参加することができ、時代の変化を目の当たりにしました。
当日は世界各地からたくさんの参加者が出席しており、各地の食料生産の事例紹介、課題、改善方法などが話されました。私は若い農業者が中心となって企画したユースの集いに参加しましたが、ホームページのトップにはその他にも様々な企画が存在し、実際の国際的フォーラムの様に自分の興味関心のある分野に自由にアクセスできる仕組みになっており、驚きました。
会議は日本時間の20:00以降で、しばらく英語から離れていた私にとっては難しい専門用語などもあり、中々理解できない部分も多かったですが、動画による活動紹介や、各国の方々が熱心に主張する様子は印象的でした。一方で、私がイメージしていた若い農業者が自由に討論するような場とは違い、発表者の意見を聞いている時間が多かったこと、また事例紹介の後の具体的な取り組みや解決方法が話される時間が少なかったような印象も受けました。
発表を聞いていて感じたことは、どこの国々でも持続的な食料生産体制を構築する上での大きな課題を抱えており、これからの世代が変えていかなくてはならない問題が山積みになっているということでした。世界各国で状況は多少違うにせよ、巨大な多国籍企業が大量生産、大量消費型で画一的な食料生産を推し進め、それを国がバックアップし、急速に各国の資源や伝統的に培われてきた智恵を破壊しています。世界で同時にこれが起こるということは、意図されて計画的におこなわれているのだと思います。SDGsといってもそれを推し進めている企業の名前を見れば、この山積みにされた問題を作ってきた企業の名前がズラリと並ぶばかりで、到底実現するものとは思えません。
各国の意志ある人々は立ち上がり、失われたものを取り戻したり、より持続的な方法へシフトしていこうと奮闘しています。私は世界でこれからこういった動きがより後押しされ、ジワジワと仕組みが変わっていくだろうと実感しています。これがトレンドとしてではなく、自然の理に叶った恒久的な仕組みと人々の意識の変化により成されると思います。そして、歴史的、環境的、地理的、民族的な観点などから見ても、これから日本が世界の中心的なモデルとなっていくであろうという気がします。世界の人々に希望と勇気を与えられるようなモデルの大元にあるのは、家族単位で営まれる農林漁業を中心とした持続的な生業が津々浦々に根付き、自然の豊かさを存分に享受している状態でしょう。
それにしてもリアルタイムで世界各国の人々の顔を見て、声を聴けるというのは実に有意義なものだと今回実感しました。これからもこのような取り組みが継続されていくと良いなと思います。