家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンのオンライン連続講座第8回「スローフードと日本の水産流通」が11月19日に開かれました。多数ご参加をいただきありがとうございました。講師を務めたFFPJ常務理事の齋藤融さん(日本スローフード協会 横浜・鎌倉支部 会長 / 横浜丸魚(株)マーケティング部次長)の発言要旨を紹介します。資料はこちらからダウンロードしてください(文末に講座の動画もあります)。
それでは始めさせていただきます。スローフードと日本の水産流通業ということですが、スローフードというのをご存じか分からないので、初めに自己紹介をいたしまして、スローフードとはということと、その日本の取り組みのご紹介。あと支部で私がやっていることなどを紹介したいと思います。
改めまして斎藤融と申します。水産の大学を出て、横浜駅の裏にある横浜の中央市場に勤めて、かれこれ30年になります。マリンエコラベルの審査員であるとか、放送大学でスローフードについて少し講義をしたりとか、そういう活動もしています。おもに市場では市場全体のマーケティングとかに取り組んでおります。
スローフードという言葉を聞いたことがありますか?
1. 生まれた経緯・背景
対面式だとスローフードという言葉を聞いたことがありますか、ということで皆さんの反応を見たりしますが、見えていなくて分からないのでそのまま走ってしまいます。このあとも歴史的背景その他をお伝えするのですが、スローフードという言葉を聞いたことがありますかという質問で、やっている側の人間からすると、知っているよねって言うのですが、実は30年も前にできた言葉なので、少し風化しているのではないかというふうに我々も思っています。あとスローフードと聞いてどんなイメージが浮かびますかということを、お時間が許すのであればチャットの方に書いていただければ、あとで私も参考にしたいなというふうに思います。ここのディスカッションが今日はない中で、スローフードとはということから始めさせていただきます。
スローフードのマークはこのカタツムリですが、1986年にイタリアで始まりました。もう30年になりますが、食に関わる社会運動で国際NPOです。緑の革命、農業の工業化がこの頃に始まった中で、現在、世界で150か国以上、100万人のネットワークを持つということで、えーそうなのということもあるかと思いますが、あくまでも草の根のローカルな、グローカルというような位置づけであります。
それで生まれた背景・経緯として、創設者はカルロ・ペトリーニで、イタリアでは意外と知らない人はいらっしゃらないというくらい、首相の次くらいに有名です。住んでいるところがイタリアの小さな町のブラというところで、1980年代に仲間といっしょに地域食材が失われていることに危機感を持って、座談会を始めたのが最初で、これがガストロのお仲間で、本当は美食家のお仲間だったというふうにいろいろな本だとかで聞いております。
その中でグローバリゼーションが、イタリアの文化を変えた。1人当たり22キロしか食べなかった動物タンパク質がわずか15年で62キロに増加したということで、この時代から飽食というふうなことになってきた。その中で当時、ローマに世界的なファストフードが進出する際に反対運動が起きて、そのときに郷土料理の炊き出しを出して抗議をしたということで、いまスローフード協会がゆっくりということでカタツムリをマークにしていますが、実は一番初めは黄色い文字のMのものが逆になった形のマークであったと言われています。そのマークはファストフードの反対の、そこからスローフードという言葉が語源だったというふうに言われています。
あとワインの産地で工業用アルコールを加えて19人の死者を出すというような、そういう食品事故が起きたという中で、追随して日本でもご記憶があるかどうか分かりませんが、タコ焼きの中に何か毒物が入っていたとか、日本でも何件かのそういう食品テロみたいなことが起きているということも、ここから始まっているのではないかと思います。この図は世界でどの位いるのということで、世界各国に活動している方がいます。
2. おいしいの力
これはだんだん中期になってから、5年、10年経ってからのスローガン、ミッションになっていますが、おいしい(Good)、きれい(Clean)、ただしい(Fair)、これが2007年前後ですかね、それくらいに出てきた話です。食というものは、一番初めにおいしいが来るのではないか、ということがスローフードの一番の語りかけで、その次に生産物がきれいでないといけない、あと流通に対してただしいことが必要ではないかというような、この3つを基本に草の根の運動を始めたということです。
スローフードも30年やってきて、最近2.0というような言葉も出てきています。食に関していろいろな変化が生じていまして、気候変動から文化の喪失、海洋問題もしかり、いろいろなものが含まれていて、食というのは最大の原因、最大の犠牲になっているというような、地球環境から一番初めに食がやられているのではないかということが考えられています。その中で生物多様性の保護であるとか、小規模というところがFFPJ と同じくするところですが、小規模生産者の支援、若者のエンパワメントであるとか先住民族のエンパワメント、ここら辺は最近入ってきた要素であります。あと食に関するキーパーソンのプラットフォーム機能ということで、あらゆるものが食に入っていると言うようなことが生まれた背景と経緯でございます。
おいしいの力ということで、日本では何をやっているのと思われるかもしれませんが、世界的にもそうですが、いろいろなことをやっています。一番当初からあるのが「味の箱舟」というのと「プレシディオ」というものです。私は水産ですが、スローフード全体では、なくなっていくタネを守っていきましょうというのが当初からのことでございました。あと「クックス・アライアンス」というのは、生産者と消費者をつなぐということで、料理人たちの力を借りるということで、そういうイベントもあります。
最近になってアフリカに1,000の農園を作っていこうと、これは飢餓とかそういう問題にも取り組んでいるというようなことです。あとは先住民ネットワークであるとか、大学もイタリアには食科学大学(UNISG)というものができています。私に関係するところではスローフィッシュということで、気候変動とか獲り過ぎ、海洋プラスチックであるとか、いろいろな問題の中でスローフィッシュという括りの取り組みがあります。
あとフードロスであるとか、動物福祉というところですね。狭いところで飼わないようにということで、日本だと岩手の短角牛なんかを認定していまして、放し飼い、放牧ということです。あとはタネと遺伝子、遺伝子組換えにも反対しています。
3. スローフードの取り組み
国際的なイベントとしては、テッラマードレというのが2年に1度あります。テッラマードレというのがスローフードで成立したのが、12月なので12月にその祭典をやっています。あとスローフード・ネイションズ、これはアメリカでやっています。あとスローフィッシュというのは、テッラマードレと年を違えて2年に1度、やっているということです。
スローチーズとか先住民族テッラマードレというのも開催しています。ここら辺は生物多様性を守るということで、過去100年間で75%の在来種が世界中で絶滅しているとか、30%の家畜は絶滅寸前になっているとか、FFPJの皆さんの方が詳しいのではないかと思っていますが、スローフードもここら辺のことを掲げております。よく言われているのが、1万年ほどかけてできてきた生態系の4分の3が壊れているというのを、1年に例えると数秒で滅びてしまうのではないかというようなことが危惧されています。
「味の箱舟」プロジェクトというのは、生物多様性の保護というので、絶滅危惧種にあたる伝統食品を守るという活動で、遺伝子組換えや農薬で大量生産された一部の作物によって、各地域の伝統作物が消滅しないように保護するというような活動も世界的に行なわれております。日本でもここに書いてあるようなものがあって、神奈川でもノラボウ菜があるとか、意外と神奈川でも在来種というものがあって、各地のものを認定するというようなことがスローフードの取り組みとして行われています。
生産者と消費者を繫げるのがテッラマードレということで、イタリアではかなり大規模なイベントで150か国から7千人くらいの人が来て、いろいろなイベントであるとか、食のワークショップであるとか、味覚ワークショップであるとか、そういうものが開かれています。多様な民族が会して食に対して会議をするというのがテッラマードレです。
スローフィッシュというのは、その裏の年にあたる2年おきにジェノバで開催され、魚に関しての気候変動であるとか、乱獲であるとか、密漁であるとか、そういうことであったり、これはシェフの食べ方であったり、販売とか、いろいろなものの祭典になっています。
チーズの祭典もあります。これはアメリカで行われているものです。日本でもそれに準じていま、2.0というか若者世代が中心になって神戸で何回か開催されています。その中でワークショップとしていろいろな、タネの話であるとか、いろいろなワークショップが開かれました。
先ほど述べたようにスローフードの方では、イタリアに食科学大学というものを作りまして食の、ワインの勉強であるとか、微生物、発酵であるとか、マーケティングもそうですし、経済学、そういうものを学ぶということで、出ている人はガストロノミストとして、世界のいろいろなところで活躍しています。いまの日本の代表の渡邉さんもこちらの方を卒業しています。
それで世界的にスローフードが最近やっていることですが、フードロス問題ということで、若い世代の人たちがDisco Soupといって、捨てられている食材を持ち寄って鍋にして振舞うということを行なっていて、日本でも世界各地と同一時期に青山でやっています。
多様な食のステークホルダーを繫ぐプラットフォームとしてスローフードの方では、農業者であるとか、畜産農家、漁業者というのに加えて、料理人であるとか学者、先住民族というようなことになるのかなというふうに思います。
こんなふうにイタリアではすごい数の人が来て、生物多様性を守るであるとか消費者と生産者を繫ぐ運動、あとは味の教育ですね、味覚教育というのもやられています。というところまでが一区切りで、スローフードのご説明になります。
日本の水産流通
1. 卸売市場とは
次に私がやっている水産のことについて、お話をしていきたいと思います。ここまでがスローフードの説明で、このあとスローフードと水産について話していきますが、おいしい・ただしい・きれい、という中でまず、市場の水産流通を見ていこうと思っています。日本というのはどこよりも水産物を流通させる機能が発達していまして、それには市場も深く関係していますが、近年、取扱量が減っていくという、すごく大変な問題に直面しています。ここら辺は私どもが一番、危惧していることですが、卸売市場が中央市場、地方市場、その他市場ということで、中央市場が格下げになっていくということがいま、上場トン数が減っていて、市場外流通というものが増えている中で、そういうことが起きています。
昔というか、いまNHKの大河ドラマで渋沢栄一をやっていますけれど、あの前後、そのあとぐらいにできた制度で、市場法というものが決まって、魚の流通というものも一部の人たちの独占ではなくて、地域地域で大卸と仲卸を決めてというような法律があったのですが、4年前くらいですかね、法改正があって、少し縛りがなくなってきています。それには、上場トン数、物流が減っているからということになります。
おおまかにこのスローフードの話もしかりですけれども、市場流通の話は一般の方が分からないと思うので、ご説明をしておくと、市場流通というのは、漁民連の方とかいらっしゃいますが、生産者、漁師さん、養殖業者、水産商社などがいて、出荷団体であるとか、水産加工業者であるとか、生産地の仲卸、こういう方を我々は荷主と呼んでおります。その中でいろいろな、昔はトラックとかがなかったので、貨車で来たりしていましたが、いまはトラックで中央市場の方へ入荷して来ます。中央卸売市場というのは、こういう感じで大卸がいて仲卸さん、もしくは売買参加者という業者がいて、そこの中の集荷と分荷というものが、いままではっきり分かれていましたが、法改正によって卸業者も仲卸と売買参加者ではない方に販売しても良いということになりましたし、仲卸業者の方が荷受から買うのではなくて、他から買っても良いというような法律に変更されてきております。
2. 市場流通の役割
元々の市場の良さというのは、ここにある7つの役割ということで、集荷、魚を集める、横浜に日本全国、世界各国から魚を集めるという大事な仕事と、公平な価格形成、セリであったり相対売りでの取引の公正化です。あとは分荷で、大量の商品を小売りへと入っていく中で、市場という場所がないと荷物というものは分けたりすることができないというのが私の実感です。ここら辺は分からない部分だと思いますが、広い場所がないと、そういうことができないので、やはりモノが集まる場所というのは、必要だというふうに私は考えております。あとは確実な取引であるとか、横浜であれば横浜駅の裏に市場がありますが、流通経費の削減。いま宅配便がネット販売とくっついた中で、かなりのウエイトを占めるようになりましたが、昔であれば食品を千円とか2千円で、小口で運ぶと言ったら、商品より運賃の方が高くなって、皆さん買わなかったんですね。スーパーで買った方が絶対的に同じものが安かったのですが、それが時間、お客様のニーズによって、時間を買うということで、安さより手軽さというものが台頭してきて、市場流通の方がいまでもコストは安いはずですが、そこら辺が消費ニーズに少し合わなくなってきているのかなという側面もあります。あとは正確な情報、何が獲れるのというような、あとはご存じのとおり衛生状態というのはすごく良いので、そこは大事なところです。
市場の流通の仕組みは、生産する人、加工する人、運ぶ人、売る人、仕分する人、小売する人、この誰かが欠けても流通の仕組みができないというようなことになっています。やはり食料品をそこの県であれ市であれ、きちんと毎日供給するには、この仕組みが安価で迅速であるということは間違いないというふうに思っています。あとはやはりスローフードとここが関係するところですけれども、大手スーパーが県を超えて進出してきて、全部いっしょになってきているとか、宅配で運べないところがない、ネットで注文できるという仕組みができてきています。少し前であれば生協さんでも何でもそうでしたが、県をまたいで商売することができないという法律が生協法でありましたので、その地域でやらなければいけないということがありました。それは酒類においてもそうだと思いますが、コンビニができる前は酒屋さん、お酒を販売するのはきちんとエリアが分けられていたとか、そういうところが、いろいろなものが規制緩和をされて、大きな波に呑まれていってしまっていて、単一的なものが並ぶというような仕組みになっているというのが、スローフードに通じるところなのかなと私は思っています。
これは、市場というのは時間がもう早いですよということと、セリというのはいろいろなセリがありますとか、あと冷蔵庫というのはビルです。フォークというのはフォークリフトのことですとか、ターレであるとか、ネコはこういう二輪車がネコですという説明です。
3. 〝もったいない〟をなくそう
簡単ですが、市場という仕組みが日本にはあるということを知っていただいた中で、最近は市場だけ、水産だけではなくて、世間の流れとして、いろいろな学者の先生とかもいらっしゃいますが、流れ的にはCSR、ESG、最後というかそれを踏襲したようにSDGsというものがこの10年単位くらいで言われるようになっています。昔であるとCSRレポートというのを会社が書いて出すとステークホルダーの方が納得していたのですが、その次には化石燃料とか使うところには投資をしないというような話でESGというところが来て、その中のすべてを、スローフードでもすべて網羅されているように、SDGsという概念が来ました。
その中で水産というのは14番にあり、海の豊かさを守ろうというようなことでございます。それで市場の取り組みというか、水産会社の方もいろいろな取り組みをしていまして、例えば横浜の中央市場であれば、コロナ禍でやっと再開していますが、第1・第3土曜日、普段は一般の方の入場はお断りしていますが、8時から11時まで開かれた市場ということで一般開放をしてイベントをやります。これはお魚の詰め放題で、未利用魚、例えば300グラム以下のサバであるとか、そういうものを200円で詰め放題で持って行ってもらって魚に親しんでもらうようなイベントです。未利用魚というのはロットがまとまらないというようなことですね。もったいないということで未利用資源の活用をしていかないと、お魚がなくなってしまうのではないかと。我々がやっているのは、もったいないをなくそうということで、未利用魚を活用した商品の販売、例えばサバのドッグを女子大生に作っていただいて販売をしています。
海洋高校とは、アイゴという魚はいままで神奈川にはいなかったのですが、そういうのが南から来て繁殖してしまって、海を荒らすというか、海藻を食べる魚なので磯焼けが起きているとか、そういういろいろな問題がありまして、高校生、大学生たちといろいろな課題に取り組んでみたりしています。
小学校では5年生の授業で水産について教えます。ここにサバの写真がありますが、300グラム以下は廃棄魚であったり、未利用魚、使われていないということで、小学校の献立に入れてもらって、微力ながら私が持続可能な漁業のお話をしております。こんなにおいしいのに何で食べないのかねっていうようなことで市場の前の1つの小学校からお話をさせていただいて、毎年、毎年、10校、20校ということで、今年、横浜市の全校でそういう課題の給食を出していただけるということになりました。その中で子供たちがミッションとして、豊かな海を未来に繫げるという、これは私たち、大人が言ったのではなくて、授業を聞いた中で感じたことを学園祭、フェスティバルで5年4組がミッションとして海を守るにはどんなことができるのかという発表を4人ないし5人の班で、8班くらいですね、いろいろなものを提案してくれて、すごく有意義な場になりました。
あとは高校生たちと、これは我々だけではなくて、最近ちらほら見るのかもしれないですけれども、「キャベツウニ・プロジェクト」ということで、磯焼けして身の入らないウニに対して、捨てているキャベツの葉っぱを食べさせて、ウニを食べられるようにならないかというような活動です。いろいろなところでやられていて、我々も佐島の漁師さんたちと神奈川の県の水産高校さんといっしょにやらせていただいています。潜って磯焼けの状態を見るとか、あとは飼育、どうやってキャベツを食べさせると3か月で大きくなるのかとか、レストランといっしょにそれの食べ方を、どういうふうにやったらおいしくなるのかということです。キャベツを食べさせるとすごく味が甘くなるので、小学生のアンケートの中では、ウニは生臭くて食べられなかったけれども、このウニは食べられるだとかいうようなものになっています。その中で発表会をしてみたり、「横浜」という雑誌で紹介されたりしました。
横浜だけではなくて、もう少し日本全体に目を向けたのがホヤです。聞いたことがあるかも分かりませんが、3.11の東電の問題で諸外国、特に隣国がホヤを買っていたのですが、そこの海域のものは一切買わなくなってしまった。養殖が復活したあとも輸出できないので、保障として廃棄証明書を持ってきたらお金を渡すということで、かなり問題になった中で、我々は国内で消費できないのかというような活動を石巻の漁業者の皆さんといろいろなイベントなどをしています。過去3年で焼却したのは1万4千トンで、食料自給率の低い日本で、食べられるものを捨てたらお金になるというのは、おかしいのではないかという、そういうような活動です。これもスローフードに通じるのではないかということを私は考えてやっていて、新しい食べ方、生で食べるのではなくて、唐揚げにして食べるというように、シェフであるとかいろいろな人のアイデアをもらって、新しい流通を考えています。
4. スローフードな水産業を
市場はどういうことを考えているかというと、持続可能な市場であり続けなければいけないということで、中央市場が格下げになるということにはひじょうに危機感を感じています。あとはこういうふうに1つひとつのことがミッションは小さいけれども、それは市場だからいろいろなことがあって良いと思っていまして、それを1つずつ地産地消ということを全力で取り組むということが、そういうふうな持続可能なものになるのではないかというふうに考えています。
あとはここから少し飛ばしていきますが、これは神奈川の漁師さんですけれども、我々はお客さんである、いろいろな料理人の方と繫ぐのが一番というふうに考えています。その中で先ほどから言っているような未利用魚の取り組みは個人的には2011年の頃に一番初めに私が手掛けたのは、オホーツクの漁師さんが売れなくなってきたので、真ホッケを活締めしたものが売れないかということで、それの商品開発をしたときに、活締めの真ホッケの開きというものを開き加工屋さんといっしょに作って販売しました。生協さんとかですごく売れたのですが、これも2017年くらいに更に獲れなくなって値段が合わなくなって販売中止にしなければいけないという中で、海がおかしくなってきているなというようなことを感じているところです。
スローフード的には、これは震災前ですが、畠山さんという方が水山養殖場というところで牡蠣の養殖をしていますが、まずは牡蠣を養殖するには、森を育てなければいけないということで、植林をされていて、私は大学の時代から存じています。そういう活動をされているという中で、フランスで牡蠣に病気が出てタネがなくなったときに、この水山養殖場から、残っているタネをフランスに送ったという経緯がありまして、いまフランスの方が牡蠣を食べられるのは、そこで種がなくならなかったからいまでも続いているということが逸話になっています。だから持続可能という中では、いろいろなところで育てるということも重要ではないかなというふうに思います。
ここからは魚離れという話で、おさかなマイスターとして、小学校で教えていると、右上で好きな食事は何ですかというものがありますが、魚は出てこないんですね。そこの中ではパンなんです。パンというのは、もともと戦後、アメリカが小麦粉を売るということで、学校給食はパン食だったんですね。いまはお米給食というのもかなり増えてきていますが、私たちの時代くらいまでは、パンを食べさせて、そこから朝食がパンになるというように、食文化を変えさせられた。一番の事例として小麦粉を売るために学校給食はパンになったということですね。
それで食育という言葉を服部先生が作られたのですが、魚を食べる訓練というものを各家庭でしなくなって、骨付きの魚を食べることができなくなってしまっているというのが現状なので、食べ方指導、アジの塩焼き一匹の食べ方を指導しています。平成の時代に、中頃ですね、2008年頃に魚と肉の、先ほどのイタリアといっしょですが、日本人は魚を食べていたのですが、肉の方が多くなったということになっております。そういう中で魚の解剖というものを煮干しでやってみたりとか、いろいろな取り組みをしています。
それから料理人になる学生さんたちに、養殖のタイと天然のタイを食べ比べてもらって、食感であるとか、値段であるとか、風味であるとかの違いですね。我々流通業者なので、どちらが良いとは言えないですが、違いを未来の料理人の方に感じてもらうような取り組みをしています。
あとは地産地消ということで、未利用魚研究会というのがあって、中央水研の石田先生のところで、10年も前から、この前の水曜日もあったんですが、勉強会をやっています。その中で神奈川県産のアンチョビを作ってみたり、これも廃棄ニンジンで作ったピクルスですけれども、それとアンチョビも廃棄されているということで、こういうものを作って売ってみたらどうかということをやってみたり、あとは発酵を進めた中で湘南魚醤油というものを作ってみたり、先ほどのキャベツウニでとか作っています。
ここに写真がありますが、私が触発されている方が、真ん中に載っているアリス・ウォータースさんという、アメリカで一番予約が取れないレストランのシェフです。マルシェを大切に、市場を大切にしましょうという方で、学校菜園というものをアメリカ全土に広げた方です。要するに農業を通して子供たちに味覚を教えるというようなことを、私は水産版をやりたいなと思っていたので、未利用魚について食べてもらえるような取り組みをしています。テッラマードレとかでイタリアへ行ったり、国内ではスローフィッシュとして、横浜の南部市場の近くのヨットハーバーで勉強会をしたり、いろいろな方に来てもらって、マングローブを守っている方であるとか、あとは学習院の先生たちと学習院の人たちに味覚教室みたいなことをやったりとかしています。
だいたい時間になりました。これは我々スローフードの中の長崎の岩崎さんという在来種の交配を守っている方で、カブの剪定の仕方であるとか、そんなことも教えていただいたりとかもしています。ということで、以上で速足でしたが、私の発表の方は終わらせていただきたいと思います。