FFPJ理事の小山昌英さんに、所属する秀明自然農法ネットワーク(FFPJの団体会員)と自然農法のこと、国連「家族農業の10年」やFFPJの役割、それらを通じて目指していることについて寄稿していただきました。
FFPJの会員の皆様方におきましては、平素よりご支援を賜り誠にありがとうございます。このたび理事を拝命いたしました秀明自然農法ネットワークの小山昌英と申します。
2019年に設立されたFFPJは、従来の農業、林業、水産業、畜産業を包括した画期的なプラットフォームであり、社会の基盤となる家族体で運営される農林漁業者が持続可能な社会の実現に寄与するという大きな目標がございます。従来までは農業なら農家というように、従来までは縦割りで進められてきた活動に横のつながりをもたらすことは、持続可能な社会を築くうえで必然的な事と思われます。そのために、今後FFPJが果たす役割はとても重要であると考えております。
私は2015年より全国の自然農法を実施する農家と、その農産物を求める消費者とともに活動を行ってまいりました。自然農法は20世紀の初頭の宗教家、芸術家である岡田茂吉師が提唱した農法で、農薬を使わず、草葉の堆肥を用いて作物を栽培し、種の自家採種を重視するものです。この農法の本質は、人間の生命と生活は地球環境との相互依存から成り立っているので、自然を利用したり搾取したりするのでは無く、大切にしてその在り方に従うことにあります。この自然農法を実施することが活動の中心ですので、消費者の需要や要望に応えるマーケットインによるアプローチではなく、自然農法により生み出される農産物や加工品、そして実施農家が自然農法を持続出来るようにするというプロダクトアウトを重視した活動が中心となっています。具体的には、野菜やお米の規格を設定しない流通・販売を行い、消費者に対して農家と生産物への理解を得るための情報提供を行い、そして実施農家同士による勉強会や情報交換の場を設けるとともに、海外の他団体(英国土壌協会やヴァンダナ・シヴァ氏)との交流活動やイベント開催を行っています。
活動していく上で特に重要であったことは、農家と消費者の顔の見える関係の緊密さにありました。単に作り手の顔が見えるだけでなく、その農家の思いや考え方、苦労などを共有できる関係をどの様に構築していくのかについて試行錯誤を行なってきました。その結果、生産現場の現状と消費者の要望が一致することが出来なくとも、お互いに納得できる環境が整うことで活動を持続することが出来ました。最も効果的であったのは、消費者が生産現場に足を運び、実際の農作業を体験する事であり、これは世代の違いに関わらず大変有効であることが分かっております。食べ物を作ることの困難さ、そして欲しいものを必要な時に必要な量を買うことができる現在の食料システムが様々な問題を抱えていることを、消費者が体感し自身の問題として「自分が出来ることは何か」を考えてくれるようになっています。
大変残念なことに、家族農業の10年に関する国内行動計画の作成に対して農水省も後ろ向きではあります。しかし、環境を犠牲にしない持続可能な農林水産業の構築は日本においても必達事項となっており、有機農業や自然農法が一般にも注目される流れになっています。この流れを単なる流行やマーケティングの一手段に終わらせず、本質的に持続可能な農林水産業のあり方を検討し、実行する流れにしていかなければなりません。それは持続可能な農業、漁業、林業を実際に行っていくために、本当に必要となることは何なのかを検討していくことであると思います。農業分野で言えば、収穫の効率性や経済効率性を全ての物差しとするのではなく、環境、社会面における物差しも含めた評価を行い、新しい世代へ良い食料システムを作り上げていくことにあるのではないでしょうか。
微力ではありますが、今後、皆様方のご期待にこたえることができるように努めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。