昨年5月の総会でFFPJの理事に選出された吉野隆子さんに、所属するオーガニックファーマーズ名古屋の取り組みやFFPJを通じて実現していきたいことなどについて寄稿していただきました。
オーガニックファーマーズ名古屋(OFA)の吉野隆子です。
OFAでは有機農業で新規就農したい人・した人を育てサポートすることを目的として、さまざまな活動に取り組んでいます。名古屋市の栄にあるオアシス21で、毎週土曜日に行っている「オーガニックファーマーズ朝市村」もその取り組みのひとつ。2004年にはじめて、18年目に入っています。メンバーの60農家は新規就農して家族で有機農業に取り組んでいる小さな農家で、半数以上は朝市村の農家が育てた新規就農者です。
コロナ後はお客様が減ってはいますが、全体の売り上げには大きな変化がありません。コロナ禍の影響で、これまで以上にオーガニックの農産物が求められるようになったということなのだろうととらえています。
朝市村は愛知県の研修機関です。有機での就農を希望する人の相談を受け、研修先の紹介、就農地探し、販路のサポートなどを行ってきました。朝市村の就農相談に訪れる人は年間30~50人に及び、「有機農業で就農したい」と考えている人が多いことを実感しています。実際に就農にまで至る人はそう多くはありませんが、これまでに朝市村を通して就農した人は愛知県・岐阜県で50人余りとなり、現在9人が研修中です。
近頃増えているのは、「祖父や父が慣行農業をしていたけれど、自分は有機で農業を継ぎたい」という相談です。農地や施設、機械がある状態からの就農は、ゼロからはじめる非農家出身者より、かなり有利です。こうした人たちが増えていけば、有機農業の広がりも加速するのではないかと楽しみです。
有機農業や有機農家を通して地域が元気になることも実感しています。
岐阜県の白川町に送り込んだ8人の新規就農者は、それぞれが有機農業に向き合いつつ、地域でさまざまな活動をしています。昨年からオーガニック給食をはじめることができ、今では毎月1回「有機米の日」として定着させました。給食への野菜の出荷も少しずつ増やしています。また、さまざまな体験の受け入れや白川町で開催しているオーガニックマルシェも人気で、関係人口はコロナ禍にも関わらず毎年増えています。元々地域の産業だった林業にも力を入れている新規就農者が何人もいます。
彼らが発信することで新規就農者だけでなく農業以外の仕事を持つ移住者が増え、白川町の4地区のうち、有機農家が多い2地区では空き家がなくなっているほどです。彼らの取り組みは、昨年6月に出版された「有機農業でつながり、地域に寄り添って暮らす」(筑波書房)にくわしく書かれているので、よろしかったらどうぞ。
ひとつ、ご報告があります。
前回の理事会(2021年11月19日)で、令和4年度農林水産予算概算要求として、これまで国が全額負担してきた「農業次世代人材投資事業」を見直し、地方に2分の1の経費負担および事務負担を求めるという案が示されていることをお伝えし、これが実行されれば新規就農希望者が減ってしまうだろうという懸念をお話ししたところ、すぐに対応していただき、FFPJから農林水産省に対して意見書を提出していただきました(意見書はこちらからご覧ください)。
うれしいことに先日最終案として示されたのは、地方の財政負担はなくなり、国がすべて負担する形でした。
農業を地域の中で大切なものだととらえていない市町村が増えており、私自身も新規就農予定者と共に役所にうかがった折に、「うちには新規就農者は必要ない」とはっきり言われたことがあります。こうした状況ですから、地方に財政負担を求めることで新規就農者が減ってしまうに違いないと心配していたので、ほっとしています。ありがとうございました。
一方で、就農後に受ける「経営開始型」の支援については、期間がこれまでの5年から3年に変更されました。有機農業は軌道にのるまで時間がかかります。はじめてから3年間は安定が難しいことはこれまでも見てきたので、ようやくこれからというときになって支援がなくなってしまうのは、厳しいだろうと心配しています。
こうしたことにも、FFPJのみなさまにいろいろ教えていただき連携しつつ、ひとりでも多く新規就農希望者が就農して生活していけるよう支援していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。