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【報告】FFPJ連続講座第15回 秀明自然農法ネットワーク〜日本と海外の取り組み〜

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FFPJオンライン連続講座第15回「秀明自然農法ネットワーク〜日本と海外の取り組み〜」が、6月17日(金)19:30〜21:00に開かれました。講師は、FFPJ理事で、秀明自然農法ネットワーク理事の小山昌英さん。皆様多数のご参加ありがとうございました(講座の資料はこちら)。講座の概要と動画を以下にアップロードしましたのでご覧ください。

*秀明の自然農法について ~国内・海外の事例~

秀明自然農法についてということで、私は現在、秀明自然農法ネットワークという、滋賀に本部がありますNPO法人の方で理事をさせてもらっております。こちらのネットワークですけれども、自然農法の農家と消費者でできている団体で、2003年から活動が始まりまして、今年で19年目を迎えます。この19年間で学ばせてもらったこと、また分かってきたこと等を皆さまにご紹介させていただきたいと思います。 

*農法としての特徴 

まず農法としての秀明自然農法の特徴は4つございまして、無肥料、無農薬、自家採種、そして連作を重視しております。無肥料というお話ですけれども、草と葉っぱ、植物性の堆肥は使います。ただこの堆肥は、目的が肥料を与えるということではなくて、土を乾かさないため、固めないため、また暖めるためという物理性を重視して与えるということになっております。自家採種も大変重視しておりまして、特に無肥料また連作ということを行なう上で、種というのをその土地で育った作物から採るということで、より無肥料、また連作に適応した形に植物が成長していくというふうになっております。 

*根伸びについて

この4つの農法を使いますと、どのように植物が成長するかと申し上げますと、まず根伸びが変わります。こちらの概念図は、左が自然農法で右が慣行農法ということで、この赤色のドットであるとか緑色のドットは肥料というのを表しています。慣行農法の方は肥料を与えますので、根があまり深く長く伸びる必要がありません。一方、自然農法は肥料を与えませんので、植物が栄養を摂るために根を深く、また長く伸ばしていくというふうな成長をしていきます。

実際にこれは稲の写真ですけれども、左が自然農法、右が慣行農法の稲になります。一目瞭然、見ていただいたら分かると思いますが、自然農法の方は大変、根っこが太く長くなっています。この根が長くなるとどういう影響があるかというところは、覚えている方もたくさんいらっしゃると思いますが、2013年、台風18号が日本を縦断したときに、本当にあちこちでたくさんの雨が降りまして、水田もたくさん水没しました。秀明の農家の方の水田も水没をしまして、しばらく水の中にずっと埋まっているような状況でした。けれども、水が引いたあとに、慣行の水田は稲が倒れたままでしたが、自然農法の水田はこうやって稲が起き上がってくるというような現象が起こっています。

また台風のときに動画を撮っている農家の方がいらっしゃいましたので、どんなふうになっているのかというのをちょっと見ていただきたいと思います。これが台風のときの映像で、すごい風が吹いています。それでこれが台風が去ったあとの動画ですが、倒れているのは慣行農法の稲で、奥の方に見えているのが自然農法の稲です。すごい風で倒れることもなく、こういう形で元気に上を向いております。この根が実際にどれくらい伸びるんだろうということで一度、自然農法のこの農家のところの土壌を調査させてもらいました。この農家の方はちょっと特殊な栽培方法をやられていまして、乾田苗(かんでんなわしろ)という田んぼの中に畝を作りまして、そこで苗を育てると。言ってみたら、本当に昔ながらの方法で苗を育てていらっしゃいます。右手がその乾田苗で育てた苗で、左手がいわゆる一般的に箱苗と言われる田植え機を使う方法で苗を育てた苗の比較です、乾田苗で育てますと、こういうようなすごい元気な苗が出来てきます。こんな苗はやはり機械だと植えられませんので、全部手植えで植えていきます。これをやりますとどんなふうな稲に育つかというと、こんな稲に育ちます。分けつ数がだいたい40本、60本、多いときは80本くらいです。収穫量もこの方は、反収8俵くらいが平均で多いときは10俵くらいいかれるという話を聞いております。

その方の水田をこのように掘ってみますと、一番下のところで水が見えますけれども、これがだいたい深さ75㎝くらいになっております。このちょうど上のところ、赤っぽくなっているところがありますが、この部分の土を取りましたら、こういうように土がなっております。このねずみ色の部分というのはいわゆる粘土質の土の部分で、この赤く筋が入っている部分、本当に根っこが伸びていって、空気中から酸素を土の中に取り込んで、その酸素によって土壌中の鉄分が酸化をしたために赤くなっている。ですので、本当に根っこが地下水ぎりぎりのところまで伸びているということで、やっぱり干ばつとかにも強くなるということが言われることが分かってきました。 

虫害について

続きまして虫の害についてです。こちらは稲の写真で、ご存じの方も多くいらっしゃると思いますが、この茶色くなっているのは、全部枯れた稲です。これはトビイロウンカ。ウンカが日本の方にやってきたときに、このウンカの害によって全部、稲が枯れてしまっている状況です。ウンカはどこからやって来るかと言いますと、東南アジアから偏西風に乗って日本の方にやってきます。こういう形で稲の茎に取り付きまして、稲の茎の中の汁を吸いますと、稲が完全に先ほどの写真のように枯れてしまいますが、このちょうどウンカが大発生した年に、面白い現象が見られました。この右手、ちょっと枯れている部分が慣行農法で、隣に秀明自然農法の田んぼがあるんですけれども、まったく被害が出ていません。では被害が出ていないから、ウンカがいないのかというと、実はウンカはいまして、ただウンカがいるんだけれども枯れないという現象が起こっていました。

原因はちょっと本当に分からないんですが、熊本の先生、教授から聞いたところでは、たぶん自然農法の稲は非常に茎が硬いので、ウンカが吸えないんだろうということをおっしゃっていまして、確かに自然農法の茎というのは非常に硬くしっかりしているんです。ただ面白いのは、この自然農法でウンカの被害を受けないというのも5年間、継続していなければこういう現象が見られないということで、5年未満の田んぼだとウンカの被害があるということも分かってきました。 

*土壌の変化と連作について

無肥料で育てますと、当然のことながら疑問が出てきますのが、ずっと無肥料でやっていたら、育たなくなるんじゃないかということと、また連作を続けると病気が発生するんじゃないかというお話です。この疑問に対して、イギリスの自然農法の農家の方が、面白い結果を研究してくれましたので、そのことについて話させてもらいます。こちらがその圃場ですけれども、場所はイエイツベリーという場所です。クルマでロンドンから西へ2時間半くらい行ったところで、この圃場はだいたい10年間、堆肥も入れていませんし、もちろん肥料も使っていません。ですので訪問者の多くの方が、「そのうち出来なくなるんじゃないですか」ということを言われていました。そこで2014年に土壌の調査をしました。連作を行なっているジャガイモの畑と、その隣の草地の土壌の状況を見てもらいました。

こちらがそのデータになります。左がジャガイモで、右が草地になっています。ちょっと細かいところを見ていただくために拡大します。すると、土の栄養素という点ではジャガイモの場所と草の場所を比較していただきますと、お分かりになるとおり、ほとんど変化がない、変わりがないということですね。ところが微生物の働きに関しては、ジャガイモの方が草のところよりも非常によく働いていると言いますか、多くいると。それでトータルの土の健康状態というのを調べましたときには、評価はジャガイモが3.1なのに対して、草は2.2という結果がでました。一般的には何もしない方が逆に土壌の健康は維持されるのではないかという話ですけれども、これは逆にぜんぜん違う結果が出てきたので非常に面白い内容になっています。

続きまして、連作をしているわけですけれども、ではということでジャガイモを2014年と2019年で土の状況を調査いたしました。リン酸カリ、それからマグネシウム。オーガニックマターですので有機物ですね。そちらの方、上が2014年で下が2019年ですけれども、それほど激しく問題になるほど減っているということはございません。続いて微生物の方の働きは、2014年のジャガイモに対し、2019年の方は逆に微生物の活性度が上がっております。それでトータルで見ますと、2014年に調査をしたときよりも、2019年に調査をしたときの方が、土壌の健康状態は健康であるという評価が出てきました。

こちらの方の調査は、外部の研究機関の方にお願いをしました。その外部の研究機関というのが、イギリスのソイルアソシエイションという、土壌協会があるんですけれども、その土壌協会が土壌の健康度を調べるために推薦していると土壌調査方法を選んだので、非常に信用できる内容になっております。イギリスの方でこのデータを見せましたところ、結構たくさんの方が首を傾げるというか、不思議な現象が起こっているねっていうことをおっしゃるそうです。では収量はどうなんだということで、2010年から2019年まで、彼は収量をちゃんと調べてくれています。見ていただきますと、栽培面積が最初は180㎡だったのが、だいたい2019年には100㎡まで狭くしていますが、収穫量は逆に上がっているというようなことが分かっておりまして、逆に連作をしている方が結果は良いというような内容が出てきております。 

*農産物について

続きまして、自然農法で作った農産物の特徴ということについてご紹介させていただきます。この農産物ですけれども、数年前からメディカル青果物研究所というところに依頼をしまして、結果をちょっと調べてもらいました。糖度とビタミンCと抗酸化力というのからなりまして、もう1つ、硝酸イオンを調べてもらっています。この慣行農法と書いてある緑色の部分は、その研究所の方でずっとデータを取っておりますものの平均です。これはほうれん草1つのデータで、自然農法で育てますと、糖度とビタミンCと抗酸化力は上がるんですけれども、硝酸イオンは上がってこないということがありまして、おいしい野菜ですね、それが出来て来るという、これは数値上の証明になっております。

加えまして、これでおいしい野菜が出来たらどんな感じの特徴がもう1つあるんだろうというところで、腐敗実験というのをやってみました。慣行農法と自然農法のトマトを8月21日に瓶の中に入れまして、どんなふうになってしまうのかということを調べました。そうしますと9月3日には慣行農法の方はもう腐敗しちゃっているんですけれども、自然農法のものは持っていると。これをオクラの方でも行ないましたところ、まったく同じような現象が起きまして、慣行農法の方はちょっと傷んで来るんですけれども、自然農法の方は2週間経っても、このような形でまだ何も変化が起きてないんじゃないかと思われるようなことが起きています。本当に自然な形で作られたものはこういう形で日持ちがするんだなあということもありますし、もう1つ面白いのは、イチゴなんかで試しますと、自然農法のものは腐敗臭というよりも発酵臭がするんですね。アルコール発酵をしているような、そんな臭いがしまして、まだ食べられるんじゃないかと思うような不思議な現象が起こってきます。 

*生物多様性について

続きまして、生物多様性についてです。こういった栽培をして、当然、農薬も撒きませんので、生き物たちにとっても良いのではないかということで、NPO法人田んぼの岩渕先生にご協力をいただきまして、毎年、田んぼの方で生き物の調査をしております。この生き物調査には付近の子どもであるとか、調査する場所の親御さん、家族とかも招待をしまして、どんな生き物がいるのかということを調べてもらっております。

そうしますと、このように多種多様の生き物が見つかりまして、中には絶滅危惧種と言われているような藻ですね。シャジクモとかイチョウウチゴケ、サンショウモと呼ばれるほとんど聞いたこともないような植物ですけれども、そういったものも生きているということが分かってきました。

もう1つ面白いのが、この生き物調査をしまして、通常ですとちょっと起こりえないようなことが起こっておりまして、ジャンボタニシがいるところというのは、非常に生物相が単一化しやすくて、ジャンボタニシしかいないという現象があるらしいんですけれども、この生き物調査をしますと、なぜかジャンボタニシと日本のタニシが共存をしていると。普通は大きいタニシが来ますと、日本のタニシは負けてしまうのが、共存をして生き残っているというような現象が見られたということも調査から分かってきています。

この生き物調査をいたしまして、アマガエルの食性というところをちょっと調べることができたそうです。この食性を見ますと、食べているものの大半はカスミカメムシ、イネミズゾウムシ、ウンカ。お米にとって害がある害虫を主に食べてくれているということがアマガエルとかで分かりましたので、こういった生き物がいることによって農薬を撒かなくても虫の害があまり発生しないんだということも分かってきました。最終的にだいたいどれくらいの1㎡に個体数がいるのか、またどれくらいの種類のものがいるのかということのデータも取ることができまして、1㎡の平均個体数が約20。種類数は4種類オーバーということで、やっぱり農薬を撒いているところよりもはるかに生き物は多いということになっております。 

*無肥料で育つ理由 ~ソイルフードウェブとエンドファイト~

ここから先ですけれども、じゃあなぜ無肥料で植物が育つのだろうというところで、ソイルフードウェブということと、エンドファイトという考え方をご紹介させていただきたいと思います。この表は海外の資料ですけれども、ミネラル・イン・ソイルということで、土壌の中の成分、こちらを世界中のいろいろなところから集めたデータから出てきている内容です。このデータを皆さんにお見せして何が言いたいのかといいますと、土壌の中にはすごくたくさんの成分がすでに存在をしていると。土壌は全部、成分があるのに、じゃあなぜ肥料が必要なのかということを考えましたときに、実はこういった成分は全部、植物が利用できないような形で土壌の中に入っているんだというような話がございます。ではどうして土壌の中の成分を植物が利用できるようになるかと言いますと、それが土壌の中での食物連鎖、ソイルフードウェブと書いてある、土中食物網というところで証明をするというか、説明ができるということです。

ちょっと説明させてもらいますと、植物は根から微生物が必要とする栄養素を出します。根の周りに栄養素が放出されると、そこでバクテリアと菌類が繁殖しまして、砦のような層、壁みたいなものを形成するということです。このバクテリアと菌類が植物を病原菌などからガードして病気から守ってくれると。病気に強い作物というのは、土壌の中のこのバクテリアと菌類のバランスが良いからで、もしこのバランスが崩れてしまうと病気とかになってしまうということになります。バクテリアと菌類はその体内に栄養素を吸収して保持するんですけれども、ここに書いてある線虫とか原生動物がバクテリアとか菌類を食べることで、そのバクテリアと菌類が持っていた栄養素を外に放出して、それを植物が利用できる形になっているというようなお話がございます。ですので、このバクテリアと菌類がいわゆる健全な形、またバクテリアと菌類をちゃんと食べてくれる原生動物とか線虫、さらにはその上の節足動物とかがきちんといるような食物網ではどういうことが起きるかと言いますと、病気発生が抑えられて、ちゃんと栄養が植物に与えられて、中には本当に一般的に言われている毒物も分解されるということが言われています。さらにこのバクテリアと菌類が出す粘液といいますか、そういう物質ですね。それによって土壌の構造を作る、いわゆるフカフカの構造もできるというふうな形になっております。

このバクテリアと菌類っていうのが、実は上に生えている植物によって比率はちゃんと変わっていまして、最初はもうバクテリアしかいないんですけれども、だんだん森になるに従って、バクテリアは少なくなっていって、菌類の方が多くなってくると。雨がしっかり降っているところ、いわゆる森が放っておいても再生するようなところは、こういう形でどんどん、だんだん森になっていこうとするということですね。一方で、例えば人間が上の木を伐採したり、土壌を耕したりすると、状況がちょっとまた変わってきますので、菌類とバクテリアのバランスがちょっとまた変わってくるということになります。こういった形でバクテリアと菌のバランスが上手く取れていると、肥料を与えなくても、きちんと上にある植物は育つというふうな理論になっております。

もう1つ、エンドファイトという理論がありまして、これは共生菌根菌と言います。この写真ですけれども、真ん中の茶色いのが松の根っこですが、茶色い部分だけで、この白く見えている部分というのは全部、菌根菌の菌糸になっております。この菌根菌の菌糸ですけれども、松の根っこの中に入っていって、松にこの菌根菌が栄養を与えると。概念図と言いますか絵にするとこんな感じですけれども、菌根菌が松に必要となる栄養素を集めてきて、松に提供すると。一方、松は光合成で作った糖分を菌に与えることで、共生をしてお互いに成長するという、そういうエンドファイトという現象が起きているということが分かっております。これは茨城大学の成澤教授が本当によく研究されていて、このエンドファイトが面白いのは、実は土壌中に窒素の栄養分があると、共生関係を結ばないらしいです。つまり植物が自分でちゃんと育っていると、わざわざ菌根菌と一緒になる必要がないのか、協力をして栄養素を取る必要がない。菌根菌が働くためにはむしろ、土壌の中でそういった肥料を与えないという形の方が良いのではないかということが言われております。 

*土壌微生物調査

微生物が土壌の中で大事なんだということで、土壌微生物について調査を行ないました。そうは言っても、実は土壌微生物の調査というのは非常に難しくて、理由はここに書いてあるとおりですけれども、土壌1g当たりにすごい数がいますし、種類もものすごいですし、それぞれ特定しようと思っても、相当大変ですし、この組み合わせで何か色々働きが変わるのかと言っても、あまりの量になかなか調べられないということがありまして、今までもなかなかこの土壌微生物の内容というのが明らかにされていなかったんです。最近はもちろんDNAで分析するとか、遺伝子で解析するとかいうことが行われていますが、それよりももうちょっと簡便に分析する方法を作り出したDGCテクノロジーの横山先生という方がいらっしゃいまして、この先生が土壌微生物多様性・活性値分析という仕組みを考えておられました。

どういう仕組みかと言いますと、この試験用のプレート、この丸がそれぞれ穴ですけれども、この中に95種類の異なった有機物が入っています。ここに土壌の懸濁液を入れまして、色がどんどん変わっていきますが、色が変わった部分は中に入っている有機物が分解をされていると。この有機物自体は色々な種類の有機物95種類の有機物が入っていまして、この多くの種類の有機物が分解されれば多くの種類の微生物が働いている。また早く色がどんどん変わって濃い色に変わっていけば、たくさんの微生物がいるということで、この度合いを調べるという土壌微生物多様性・活性値分析というのを、それぞれの圃場で行なってもらいました。

そうしますと、化学肥料とか農薬を使用している土壌は、これポイントですけれども89万ポイント。それに対して自然農法をやっておりましたのは208万ポイントということで、非常に活性値が高いということが出てまいりました。それで全体、水田でこのような形になっておりまして、このAからMまでが自然農法のサンプルです。こちらの方を見ていただきますと、慣行栽培の水田の平均よりも、自然農法の水田の方が微生物は多い。畑の方も当然、調べまして、畑の方も慣行に比べると微生物の量が多いということが分かりましたので、無肥料で出来ているということはやはり、微生物の働きというのが非常に重要なんだということが分かってまいりました。 

*世界の自然農法 ~ザンビアとフィリピン~

この自然農法ですけれども、幾つかの国で実践されている農家の方がいらっしゃいまして、今回はザンビアとフィリピンのを簡単に紹介させてもらいます。ザンビアという国はアフリカの赤いところですね、南の方にありまして、これがそのザンビアの地図ですけれども、国土は日本の2倍で、人口は日本の6分の1しかいません。非常にもう土地がたくさんあるという、そういった土地でございます。真ん中に見えているのは、ザンビアでのプロジェクトの担当を行なっていらっしゃる今井さんです。このプロジェクト自体もすでに10年以上経っているんですけれども、当初、アフリカの方にぜひ自然農法を教えてくれと言われて今井さんが行ったときに、このアフリカの人たちは別に化学肥料も使っていないし、農薬も使っていないのに、いったい何を教えればいいんだろうというふうにちょっと不安に思いながら行かれたそうです。

実際、行ってみますと、やはり化学肥料も農薬も使っていないですし、じゃあ自然農法という技術を教えていくのに、いったい彼らに何を伝えることができるのかと考えていたときに見えたのが、こうやってちょうど干ばつが起こっていたんですけれども、その干ばつで枯れているトウモロコシとこの青々と実っているトウモロコシが2つございました。これをプロジェクトをやってくれというふうに声を掛けてきたこのメンバーに内容を聞きましたところ、この青々としているのは、昔から栽培されているトウモロコシだと。この枯れているやつはF1種ですね。あのハイブリッド、雑種1代と言われている、化学肥料とかを使うために開発されたようなトウモロコシですけれども、そちらの方だということが分かりました。彼ら農家の人たちは驚くことに種が採れるということを知らなかったそうです。ほとんどの人が種は買うもので、肥料も当然、買うものっていうふうに考えていましたので、今井さんは種が採れるということを伝えまして、在来の種を中心にした種採りでトウモロコシを育てるというプロジェクトがスタートしました。

私も実は機会があって、行かせてもらうことが出来まして、ちょうどそのときが同じように干ばつが起こって、こんな感じであんまりF1のものはほとんど育っていない状況でした。こんな状況だったので結構、大丈夫かなと思ったんですけれども、奥の方を見ますと、このすごく良く育っているトウモロコシ畑が見えました。この真ん中の女性がトウモロコシの持ち主です。干ばつが起こってなかなかハイブリッドの種を育てていた、ご自分の旦那さんが育てていたらしいんですけれども、それが上手くいかなかったのが、自分の在来種はとても元気に育ってくれて本当に嬉しいということを申しておりました。今はこのプロジェクト、だいぶ大きくなってきまして、学校とかを農家の地域に作るというような活動まで発展してきております。

続きまして、フィリピンです。この写真をちょっと見ていただきますと、フィリピンの光景ですけれども、ちょうど私が行かせてもらったときに、稲刈りをしておりました。フィリピンでの稲刈りは、刈ったあとにこういうふうに脱穀機で、エンジン式ですけれども、その場で脱穀をしてしまいます。脱穀をした種籾をどうするのかなと思っていましたら、道路にこうやって敷いていまして、乾燥をこれでさせるみたいです。これ、普通のアスファルトの道路ですので、クルマが通りますが、ぜんぜん関係なくそのまんま乾燥をさせていまして、乾燥したらクルマが踏んだ跡だろうが何だろうが、詰めてお米として販売するというのがフィリピンの農業です。確かに土の上で乾燥するわけにはいかないですし、場所もないので、こういうふうになっているんでしょうけど、もっと面白いのが、奥の方を見ますと、何かやっている集団がございまして、何をやっているのかなと見ましたら、苗取りをしてはるんです。苗取りをされていまして、その隣を見ると田植えをしていると。一方で稲刈りをしていて、もう片方で田植えをしているという、何かよく分からないすごい現象が起こっておりまして、この国だとお米がたくさん穫れるんだろうなというのを本当に実感しました。

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、フィリピンでは緑の革命と言って、ハイブリッドのF1の種と化学肥料を大々的に推進をして、収量を増やしていくような活動が行われています。それは1960年に始まったことなので、私が行ったときはとうに終わっている話だと思っていましたが、行ったとき知ったんですけれども、フィリピン政府はやはり肥料を農家の人に買わせるということを推進しておりまして、こういうふうな肥料を割引きする割引券、そういったものを農家の人に配って、できるかぎり肥料を使用させようとしておりました。

フィリピンの現地のNGOがそうではなくって持続可能な方法を農家の人に教えて欲しいということで、同じくこの今井さんがその場に赴きまして、農家の方に自然農法の技術であるとか、自然農法の理論を教えました。これは今もリーダーをやっておられますラモンという農家の方ですけれども、彼が自然農法・無肥料でやり始めまして、結果がこちらのデータになっております。フィリピンでの収量比較になりますと、収量は肥料をやっている慣行農法も自然農法も同じくらい穫れていると。ただ精米をしたあとに、精米度合いが慣行農法のものは50%だったのに対して、自然農法のものは63%ということで、ちょっと割合が良くなっているので、このラモンの結果を見て、周りの人がかなり興味を持ってきていると聞いています。 

*流通活動 ~共同購入方式~ 

海外の事例は以上で、今まで生産面のことについてお話をさせてもらいました。だいぶ駆け足でダーっとお話をしてきたんですけれども、これから先ちょっと、じゃあ作ったものはどうやって流通をしているのかっていうお話があると思いますので、秀明の中でどういうふうに流通しているのかということをお話したいと思います。

これは概念図になりますので、かなり端折っている内容になりますけれども、一般的な農産物の流通というのは生産者がいて、JAの組合の方は当然、JAに出荷をして、そのJAが卸であるとか、消費者に流しているという現状があると思います。また中には卸売市場とかに直接、卸している生産者の方も多いと思います。それに対して、秀明の流通というのはどうしたかと言いますと、消費者のグループがありまして、この消費者のグループの中から生産者と直接、色々なやり取りをする担当者というのを設けます。担当者が消費者と連絡を取り合いまして、消費者の注文をまとめて、それと同時に生産者の方から、こういうものが出来ているよ、こんなものが穫れるよということの案内も消費者の方に回して、流通担当者はそれを生産者に発注をすると。生産者の方は穫れた野菜を仕分けするセンターの方へ持っていきまして、消費者も協力をして、配布を行なう。代金の回収は流通担当者がまとめて、生産者の方に代金支払いをするという、こういう形式を取っております。

このような形式を取った一番の理由というのは、まず生産者が一般の市場に流そうとすると、等級と言いますか、野菜でもA品、B品とか、A品でないと出荷できないということがあります。そういうことですと生産者の方もやっぱり困りますので、何とか全ての収穫物を生産者が販売できないかということで、アメリカとかでもやられていますCSA、こちらの方の部分を一部、取り入れまして、このような流通形態を取っております。

これはちょっと昔の写真ですけれども、やり始めたくらいのときには、こういった形で農家は穫れたお野菜全部をまとめて右の方ですね、これはセンターですけれども、流通の仕分けをする場所に持っていきまして、この写っている人たちがみんな消費者の方ですけれども、消費者の方がたが仕分けをするという形式を取っております。この消費者の方がたは単に仕分けをしたりするだけではなくて、収穫が忙しいときなどに関しましては、収穫のお手伝いもする。援農もするということで、これは本当に大事なことですけれども、消費者が生産者のところに援農に行きますと、援農するだけではなくて、やっぱり土に触れると非常に体も元気になりますし、心も元気になるんですよね。同時に生産者がどんなことをやっているのか。大変なことをやっているのであれば、そういうことも理解ができるようになりますので、本当に顔が見える関係、絆が繋がっていく、強くなっていくということがこの活動の中で示されております。 

*食育活動

ただこの活動だけではやはり十分ではありませんので、ちゃんと自然農法のものをもらっている。環境に優しい活動をしているというのが、どういう意味があって、なぜこういうものを食べなければならないのか、なぜこういうことを行なわなければならないのか。なぜこんなものを、こんなものという言い方は変ですね、こういうものをいただくというふうにしているかという、その内容をきちんとお伝えする活動をしなければならないということで、食育活動も行なっております。この食育活動ですけれども、ビタミンとか必須栄養素とか、そういった内容のものではなくて、自然順応、自然尊重という観点から食育を行なっておりまして、具体的には和食、それから旬のものをいただくということを大事にしております。

ちょっと面白い内容があるので、皆さんにご紹介させていただきます。これ、日本人の昔の映像ですけれども、おそらく明治時代くらいで、これ、1俵を背負っているんです。1俵60㎏あるものです。これは庄内米歴史資料館に展示されているらしいですが、右手の写真を見ていただきますと、この女性が何と、俵を5俵背負っていると。米俵が60㎏というのは、女性が60㎏だったら担げるというので、60㎏というふうにされたらしいですけれども、その60㎏の米をいったいどれくらい、この人たちは担げるだろうということで、試しにやってみたらこんなに担げたと。今の日本人がこれだけ担げるかというと、60㎏を5個担ぐと300㎏背中に乗っていますから、たぶん私もこれは潰れるんじゃないかと思いますが、当時の日本人はこれを担ぐことができたんですね。

さらに明治時代ですので、お抱え外国人医師というのがおりまして、このベルツというドイツから来たお医者さんですけれども、このベルツさんがちょっと面白い実験をしました。その実験は何かと言いますと、東京から日光まで行くのに馬を用いて行ったのと、人力車で行ったのとどっちが速かったのかっていう実験をこのベルツさんはされたそうです。そうしますとこの140㎞の間、何と馬は6回くらい乗り換えなければ駄目だったらしいです。6回乗り換えて16時間掛かったのが、人力車は誰も交代することなく、14.5時間で走り切ったそうです。これがすごくベルツさんにとっては本当に驚きで、当時の日本人の食事というのは決してヨーロッパの人とかにとって栄養があるっていう食べ物じゃなかったみたいですけれども、これだけの体力があるのは何でだろうということで、日本人の食事というのは本当はすごいんじゃないかということをベルツさんはおっしゃっています。

また、実はビタミンCの含有量というのが、昔の野菜に比べて今の野菜はちょっと減っているという現状が日本食品標準成分表ですね。これはインターネットでも取ることができますが、1950年のほうれん草のビタミンCというのは140を超えているんですけれども、2000年のほうれん草はもうかなり減っていまして、40を切っています。ことごとくこういう形でほうれん草もキャベツも小松菜も春菊も全部、ビタミンCの含有量が減っているというようなことが見られまして、やっぱり今はいつでも何でも食べられますけれども、そういうふうなものをいただいてもなかなか本当に栄養豊富なものが摂れないというような現状が分かっているというようなこともお伝えしています。

もう1つはお米が最近、消費されないということで色々なところで話題になっています。日本人がお米を食べないことになったということと、ガンで亡くなっている方のデータを相関しますと、逆相関になっているというような形が分かっているので、会員の方がたにはこういったことをお伝えして、本当に和食を食べていくというのが日本人としては大事なんだということをお伝えしています。 

*最近の活動 ~環境改善工事~ 

最近の活動でまた新しいことが分かってきました。いままで説明をさせていただきまして、そうは言っても全てやはり上手くいくというわけではございませんでした。無肥料ですのでやっぱりなかなか育たないということもあったりしますし、同時に何年も続けているんだけれども、思ったような結果が出てないということが1つの悩みでした。それに対して森の学校の矢野先生という方がいらっしゃいまして、この先生と出会ったことで、本当に今まで我々も考えていなかったようなことが原因になって上手く結果が出てないということが分かってまいりました。

この矢野先生は本当に自然を観察して自然から学ばれて、土の中の空気と水の流れを正常にすれば、枯れた木も植物も生き返る、自然が蘇えるということをおっしゃっています。この図ですけれども、昔はそんなにコンクリートであるとか、基礎をコンクリートで固めたりとかということはほとんどなくて、石積みの擁壁であるとか、家を建てるときも、基礎には石を使っていたりしましたので、昔ながらの住宅の周辺環境も水と空気が大地の中を自由に行き来することが出来たということが言われています。ところが高度成長期になりまして、コンクリートがたくさん使われるようになってきました。現在は家や基礎はもうほとんどコンクリートとか、それから建材みたいなものを使ってプラモデルのように組み立てられますし、壁はほとんどコンクリートで固められています。農地整備もほとんどの場合、この写真にあるとおり重機を使ってものすごく土を固めるということが行われています。こういうことが行われますと、水も空気も動かなくなって、どんどん土が硬く締まってくるという現象が起きてきます。

これをどうやって解決するかと言いますと、穴と水を掘るだけで問題がある程度、解決するというのが矢野先生の手法です。これは実際の光景ですけれども、こういうような形で傾斜が変わるところに、水を掘ったり、間に点穴ですね、そういったものを掘ったりします。掘ったところには溝が埋まらないように、こういう有機物を上に入れていきます。この工事をやりますと、ちょっと見にくいかもしれないですけれども、真ん中のこれはカシの木でして、工事に入る前はかなり枝が見えていまして、枯れかけているような状況でした。この工事をやりまして1年経ちますと、このように緑が本当に復活しまして、とても元気になりました。先ほどの点穴ですけれども、これはオーガという穴掘り機で果樹の周りに穴を掘りましたら、果樹からこういう形で新しい芽が出てきました。土がやわらかくなって、土の中の水と空気が流れて、根っこが伸び始めまして、このように新しい枝が芽吹くようになりました。新しい枝が芽吹くようになりますと、木が元気になりますので、これはリンゴですけれども、自然農法でリンゴが出来るようになりました。

また別のケースですけれども、これはちょうど畑の畝と畝の間ですね。ここに点穴を掘りました。これは別に先ほどのオーガというものは必要なくて、本当に剣スコップで穴を掘っただけですけれども、この穴を掘るだけで、このカブがなかなか大きくならなかったみたいですが、穴を掘るだけでこんなふうにカブが大きくなるという現象が出来てきました。この方法は「現代農業」にも取り上げられまして、これは2019年10月号ですが、お茶の農家の方が木が弱ってきて、チャドクガも出てきまして、大変な状況だったんですけれども、この工事をやることでもう一度、木が復活してきたって現象が起きてきていますということが取り上げられました。 

*道法流剪定術

続きまして、道法流剪定術という、これを編み出されたグリーングラス代表の道法正徳さんという方がいらっしゃいます。自然農法でやっぱり一番難しいと言われていたのが果樹でした。この果樹ですけれども、なかなか思うような形でいきませんで、これをどういうふうにしたら上手くいくのかということをこの道法さんから学ばしてもらいました。

ぜんぜん今までの剪定方法とは違いまして、普通は木を低く保つために、いわゆる新しく伸びてきた枝というのは切ってしまいますが、この道法さんによると、新しく伸びてきた芽というのは、土の中で言うと根っこにあたる。だから上の新しい芽を切ってしまうと、下の根っこも実際に死んでしまうと。特に自然農法で無肥料で育てる場合には、根伸びが大事なのであれば、その新しい勢いのある若い枝を残していく。逆に枯れ枝であるとか、細くて弱い枝を取る。ですから木自体がどんどんどんどん上へ上へ伸びていくような剪定方法になっております。剪定するときもちょっと余分に残したりはしないで、本当にギリギリのところで切っていかないとこの切り残し自体が枯れる原因だということです。この道法先生にうちの本部にあるモモの木を見てもらいました。このモモの木は、なかなか自然農法でずっとやっておりますが、実が成らなかったんですが、道法先生に切ってもらった翌年、こういう形で本当に満開の桜が咲きまして、モモが出来てきました。このモモが本当にだいぶ大きくなってきまして、剪定の仕方を変えるだけで、こんなに植物のあり方というのが変わっていくんだということが分かってきました。

道法先生は本も出されていまして、「野菜の垂直仕立て栽培」というのがありまして、この先生がやられている1つにイチゴの垂直栽培、これを推奨されていましたので、我々もこれをやってみました。イチゴをどんどんどんどんランナーを上へ伸ばしていくっていうやつですね。そうしますとだんだん枯れかけていた株がどんどん元気になってきまして、本当に始めは3株しか残っていなかったんですけれども、今は年々子株が増えていって、栽培面積が増えてきております。 

*在来種・固定種

あと最近、在来種、固定種を守っていく活動を重視しております。一番最初にお話したように、自家採種ということが自然農法の中でとても重要な要素になっておりまして、自家採種を行なうにはやはり地域の在来種とか固定種と呼ばれる品種が必要になってきます。ハイブリッドのF1の品種を育てて種を採ったとしても、同じものが出来てきませんので、またハイブリッド自体が肥料を与えることを前提に作られているので、無肥料の自然農法には向かないということがあります。在来種とか固定種の存在というのは、本当に自然農法をやっていく上でとても大事ですが、少し前に問題になった種子法とか種苗法の改正以上に、実はより水面下では深刻な問題になっているのは、今まで代々種採りをしていた農家の方がた、ご存命でお元気だったんですけれども、その方がお亡くなりになられまして、だんだん種を採り続けることが出来なくなってきている。こういったことを踏まえまして、私どもとしましては在来種、固定種の保存、また増やしていくということを取り組みとして最近は力を入れております。

一昨年から広島大学の名誉教授、猪谷(いたに)先生が主催されているお米の勉強会というのがあるんですけれども、この本部の圃場でお米140品種を植えて、実際に育つ様子を見てもらいました。私も見たことがなかったのですが、お米と言ってもこんなにたくさん種類がありまして、古代のお米から本当に小さい10cmくらいのお米とかもあります。このお米の勉強会に参加された皆さんが、どんなことをおっしゃっているかと言いますと、「来年、自分が作りたい品種を見つけることができた。面白い、美しい、楽しい」、「たくさんの種類を見るだけでワクワクしてきます。多様であることはいいですね」、「いもち病耐性を持ち極強として有名な戦捷(せんしょう)やアメリカへ行って帰ってきたワタリブネなど、有名な在来種を見ることができて嬉しかった」と本当にとても喜んでおられます。これも現代農業の方に取り上げてもらいました。

こういったワークショップを開催しまして、本当に感じることは、自家採種や在来種、固定種の保存というのは、単に生物学的な多様性が重要であるとか、遺伝起源が重要だからということではなくて、それぞれの種が育ててきた人の大事にしてきた思いであるとか、また歴史、文化というのを含んでいますので、そういった背景を考慮しないで、効率性とか経済性の観点からのみ、種のことを評価するのは色々な点で問題を抱えるのではないかなと思います。種採りの担当者がこんなことを言っています。「種の歴史は人間の歴史、食文化の歴史です。今その何千年と続いてきた作物と人間との共存関係の断絶が起こっています。人間が作物、自然との共存関係を忘れ、種を採り作物の命を繫いでいくという尊い行為をやめてしまったために、自然の摂理が理解できなくなり、自然に対する感謝の心が消えつつあります。種が採れるまで作物の一生をお世話し、見届け、次の世代に受け継いでいくことで、自然の摂理、自然の恵み、命の繋がりなど、目に見えない大切なことを自然な感覚として理解できるようになり、感謝の心が育まれ、自然に寄り添った人間として、正しい生き方が見えてくるのではないでしょうか」と。やっぱりこういうふうな人の思いとかを残していくような、こういった活動を広げていく必要性を感じています。 

*自然農法と精神性

だいぶ時間の方が急いてきましたので、最後にこれだけお話させていただきたいんですけれども、題材は自然農法と精神性というところです。ちょっと不思議なお話をするかもしれませんので、そんなことがあるんかいなというふうに思っていただくだけでも結構です。ご存じの方がいらっしゃるかもしれませんが、フィンドホーンという団体がスコットランドにあります。国連のNGO団体です。このフィンドホーンがよく言っていることが、何と作物には妖精が付いていて、その妖精に育て方を聞くことで、本当に不毛の土地で作物が育つというようなお話です。インターネットとかで探していただきますと、そういう話がゴロゴロ出て来ますが、その話を受けまして、ある実験をちょっとやりました。

これはトウモロコシの発芽実験です。上のシャーレに載っているのが、子供たちが1人1人、このトウモロコシの種を握りしめて、「元気に育ちますように」と心を込めてから播いたそうで、その下のものはそのまま播いたそうです。そうしますと、何と心を込めて播いた種は、見ていただいたら分かるんですけれども、とても元気に発芽しています。ところが下のそのまんま播いた方は、あんまり良く発芽しているなという感じではないです。これは学校で購入した実験キットに入っていた種らしくて、別に何か特別なことをやったわけではない、ということです。

先ほどのイエイツベリーの農家の方が大変面白い経験をしていまして、彼が育てているトマトがブライト病という胴枯れ病、ジャガイモの疫病というのに罹りました。これは2014年6月で、彼はハウスで育てていますが、雨が10間続いて、そのために600本植えていたトマトが全部、ブライト病、カビとかによる病気に罹ったそうです。病気に罹りますと、新しい芽は全部枯れてきて、成っている実もどんどん腐ってくるということで、有機農家に確認をしたところ、ブライト病は回復不可能だから、全て引き抜いて燃やして菌を殺さなければ駄目だと。菌は土の中にいるから、今後、トマトはここの場所に植えたら駄目だということを言われました。彼はどういうふうにしたかと言いますと、トマトに毎日、話しかけて、励まして、土にも話しかけたそうです。毎日、土に「どうかトマトを助けてください」。トマトには「トマトさん、どうか良いトマトを作ってください。人が喜ぶようなトマトを作ってください」と。何とこの胴枯れ病を乗り越えて、最終的には10株は復活できなかったみたいですけれども、残りの590株は全部、復活して、こういうふうに実も付けてくれたらしいです。

同じようなことがケールにも起こりまして、彼はケールでやったらしいです。ケールでやると面白かったのが、ケールと土に最初に同じようにお願いしたらしいですが、お願いしたら1週間経過したあと、虫が大発生してしまい、このままだと本当に死んでしまうという感じだったそうです。今度は虫に「虫さん、ありがとう。虫さんのおかげでこのケールがさらにピュアになって強くなります」、「どうかいつまでもここにいてもらってもいいですよ」といふうに話しかけたらしいです。そうしたら1週間後にケールのこの病気が止まりまして、虫も1週間と3日経ったあと全部いなくなって、最終的にはこれくらい大きくなったらしいです。

本当に不思議ですけれども、これは草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしっかいじょうぶつ)と読むんですが、空海が言ったみたいで、草や木や国土、土にも仏さまがいる。意識があるんだと。この考え方を持っているというのは実は日本人だけですって。この自然農法という肥料を与えないという考え方も、やっぱりそういう自然のことをよく分かっていると言いますか、自然を身近に感じることができた、我々日本人が持っている本当に素晴らしい文化が影響しているのかなと思います。もしこれが嘘だと思われる方がいらっしゃるんだったら、1回ちょっと、ご自分でも試してみることをお勧めします。私も実はフィンドホーンの話を聞いて試してみたら、何と本当に同じように虫がいなくなりましたので、びっくりしました。こんなことがあるんだなあと、そういう世界というのがあるんだなあと自分で体験することができました。

だいぶ時間をオーバーしちゃいましたけれども、以上でございます。本当にご清聴、ありがとうございます。もし色々と自然農法のこととかで確認したいことありましたら、ウェブサイトとか自然農法チャンネルという動画集もやっていますので、よろしければ、見ていただければと思います。以上、ご清聴をありがとうございました。