2022年6月29日(水)の日本時間12:00~18:30に「国連『家族農業の10年』に関するアジア太平洋地域対話集会—より包括的で回復力のある食料システムの構築における家族農業の役割を強化する:アジア太平洋地域における多重危機への対応—」がオンライン(Zoom)で開催され、YouTubeのライブストリーミングでも動画が生配信されました。FFPJの関根佳恵常務理事が日本代表として出席しましたので、概要をご報告いたします。報告者の資料と動画は、後日公開される予定です。
今回の集会は、2022年9月19~22日に開催される国連「家族農業の10年」の世界フォーラムの準備会合として開催されました。国際機関、各国政府、農業団体、NGO等から150名超が参加し、英語、中国語、ベンガル語、インドネシア語、クメール語、ネパール語の6か国語で同時通訳が行われました。集会では、アジア太平洋地域における2019~21年の3年間の成果と課題が共有されました。
成果:南アジア地域協力連合(SAARC)で国連「家族農業の10年」の地域レベルの行動計画が策定され、3カ国(インドネシア、ネパール、フィリピン)で国レベルの行動計画が策定されました。また、バングラデシュ、カンボジア、インド、日本、ラオスでは国内行動計画の策定に向けた関係者の取り組みが始まっています。さらに、国連食料システムサミットと連動しながら推進されているICTを用いた家族農家の参加型コミュニケーションの取り組みとしてComDevAsiaの事例が紹介されました。
課題:気候危機、新型コロナウィルスの感染拡大による危機、ウクライナ危機によって、家族農業を営む人びとは食料や肥料等資材の価格高騰をはじめとする大きな課題に直面しています。こうした世界的危機の影響を緩和し、食料や栄養の保障をするためには地域固有の社会・経済・環境的状況に合わせた支援が必要です。
後援団体への事前の聞き取りにもとづいて、集会では国連「家族農業の10年」の世界行動計画の7つの柱のうち、第2の柱(若者への支援)、第4の柱(農業組織の強化)、第6(気候変動への対応)の柱が討論のテーマに選ばれました。
自由討論では、気候危機、コロナ危機、ウクライナ危機に加えて、以前から続いている農地の所有・利用権をめぐる対立、貿易自由化による国際競争の激化と農家の所得減少の問題、貧困・飢餓の問題、種子への権利の問題、農家の教育の問題、企業的農業による寡占の問題、農業の工業化の問題、気候危機を深める化学肥料への補助金の問題、多様な主体 (マルチステークホルダー)の参加が重視される国際的潮流の中で最も立場の弱い農家が疎外されている問題、本当の意味で「参加型」で「誰も排除しない」議論の重要性、外国における移民労働への誘引と国内労働力の空洞化の問題、都市化の問題、山間部等の条件不利地域の問題、アグロエコロジーへの転換等、いずれも極めて重要な問題が提起されました。これらのうちいくつかは、特別にテーマを立てて集中的に議論することが提案されました。
FFPJは、最後の総括の会合で日本における取り組みを報告し、提言を発表しました:
(1)3年間の取り組みとして、コロナ禍の中でもオンラインの学習会やイベント、政策へのパブリックコメント、書籍の出版、マスメディアやSNS等を通じて、農業関係者や政府だけでなく一般市民への情報発信と啓発活動を行いました。
(2)こうした中、日本政府が中小家族経営を支援するとした新基本計画を策定し、関連する農業政策や法律が見直されてきています。国連「家族農業の10年」では各国の国内行動計画の策定を促すことを到達目標としていますが、それに限らず幅広い家族農業を支援する政策の動向を捉える必要があると思います。
(3)日本では、政府が世界農業遺産(伝統的で環境負荷の少ない小規模農業を支援する制度)の枠組みのなかで、国連「家族農業の10年」の予算をつけています。国連「家族農業の10年」と政策目標を共有する他のプログラムとの連携も重要だと思います。
(4)国連「家族農業の10年」の運営委員会への提案:2020年7月に国連人権理事会は現行の自由貿易体制が食料安全保障や食料主権を実現できていないとして、その見直しを求めました。また、2021年9月に開催された国連食料システムサミットでは最先端技術(ゲノム編集、デジタル技術、ロボット技術、人工知能等)の有用性が議論されましたが、市民社会団体はこれに反対しました。自由貿易や最先端技術のあり方など、意見が分かれているテーマを国連「家族農業の10年」の枠組みの中で正面から議論すべきだと思います。
◎国連「家族農業の10年」に関するアジア太平洋地域対話集会—より包括的で回復力のある食料システムの構築における家族農業の役割を強化する:アジア太平洋地域における多重危機への対応—
日時:2022年6月29日(水) 日本時間12:00~18:30
場所:オンライン(Zoom)+YouTubeライブストリーミング(後日、資料と動画を公開予定)
共催:国連食糧農業機関(FAO)・国際農業開発基金(IFAD) のアジア太平洋地域事務所
後援:アジア農民の会(AFA)、アジアDHRRA、ビア・カンペシーナ、PIFON