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【報告】FFPJ第17回オンライン講座「小さな生協の大きな挑戦~食肉加工を通じた食の自給と地域福祉~」

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FFPJオンライン講座第17回「小さな生協の大きな挑戦~食肉加工を通じた食の自給と地域福祉~」が8月19日19:30〜21:00に開催されました。講師は、生活協同組合あいコープみやぎ代表理事常務(FFPJ理事)の吉武悠里さん。食肉加工や農福連携に取り組むあいコープみやぎの挑戦について語りました。以下は、吉武さんの講義の概要になります。(講座の資料はこちら)。発言概要の末尾までいくと、動画がアップロードされています。

皆さん、こんばんは。生活協同組合あいコープみやぎの吉武と申します。今日の講座の題目がこのような「小さな生協の大きな挑戦」という立派なタイトルになっていますが、これは事務局の岡崎さんにカッコいいタイトルを付けていただきました。本当に非常に恐縮と言いますか、そんなたいそうな話はできないんですけれども、私どもは本当に小さな小さな地域生協、宮城県仙台市で細々と言いますか、地道にそれなりに頑張ってやっている生協です。私たちの今のちょっとした取り組みを今日はご紹介させていただけるということでしたので、お聞きいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 

*自己紹介

まず私の簡単な自己紹介となっております。生まれは宮城県仙台市ですけれども、親が福岡の八女と神奈川の平塚でございまして、その掛け合わせで宮城で育ったという形です。子供は小学生が2人おります。妻は1人です。あいコープに入協したのが2004年ということなので、18年目になります。最初の7年ぐらいは営業とか配送業務、あいコープが無店舗の宅配専門の生協なものですから、配送関係をしていました。ちょうど震災の直後、2011年から商品部の職員になりまして、2018年から商品部長、そして今の常務理事ということでやらせていただいております。 

*あいコープみやぎの紹介

皆さんの中でも生協に関して、それぞれの地域の生協さんと関わりを持っていらっしゃる方も多いと思います。仕組みとか取り組みとかは、だいたいご存じかと思いますが、3年前にちょうどあいコープが設立40周年ということで、それ用にあいコープの簡単な紹介の動画を作りましたので、まず私の説明よりも動画を見ていただくと何となく雰囲気を感じていただけるかと思います。ちょっと長いんですけれども、途中で切りますので、8分間くらい動画にお付き合いいただければと思います。(動画省略)

今、動画の中で産直のところと、社会福祉法人みんなの輪というパン工房、最後に野菜の小分けのところが出てきました。ここが今日の話の中心になりますので、何となく覚えておいていただければいいかなと思っています。

改めましてあいコープの紹介をさせていただきますと、設立が1979年で現在、登録の組合員数が1万5千人くらいおります。ですけれども、中にはお休みの方とか共済とか電力の加入だけの組合員もいるので、実際に商品を利用している人数で言うと、1万2千世帯くらいということになっています。こちら宮城県だとみやぎ生協というコープ東北グループですけれども、非常に大きな生協さんがあります。みやぎ生協さんは組織率が70%以上、7割の世帯が組合員になっているという日本一の大きな生協です。ただみやぎ生協はお店もあるので、宅配だけで言うとそんなにないんですけれども、私も店舗会員になっていて、その辺で、仙台で道を歩いている人を捕まえたら、お母さんとかおうちの方はほとんどみやぎ生協の組合員さんという感じです。そんなわけで我々の方は1万2千世帯ということで、非常に小さな小さな、事業高的には30億円くらいの生協です。 

*基本理念と行動理念

あいコープの基本理念と行動理念はこのような形になっています。基本理念は、「私たちは協同の力で、人・食・環境を大切にする持続可能な社会をつくります」、そして行動理念が6つありまして、より自然で安全な食べ物、暮らしと健康とか、食料自給、産直、それで3つ目の被害者にも加害者にもならない。これが非常に私も大切にしているところです。それで今日の話は4つ目の人と人の輪を大切にして、誰もが安心して暮らせる地域づくりに取り組みます。ここの行動理念に関わるところの紹介になります。

あいコープも東日本大震災のところでやっぱりダメージを受けました。そこから数年間、非常に利用が落ち込み、組合員数もガクンと減りました。東電の福島原発の問題とかもありますし、色々なことがあって5年間くらい非常に厳しいときがありました。その後、色々なことをやりまして、V字とまではいかないんだけれども、5年くらい前から回復基調になって、特に去年とかはコロナ禍でちょっと消費も増えてあがってきました。今年は逆に非常に厳しんですけれども、このような状況になっています。 

*3つの原動力

この間、回復をしてきたところの原動力となったことが3つあります。

① 「あいシテル」のあいコープ

・PB商品の開発

1つは、ブライベートブランド(PB)で「あいシテル」というブランディングをしました。うちは本当に単協、事業連合に属していないというか、厳密に言うとお世話になっている生協さんが色々とありますが、1万2千人の組合員の中で、独自の商品を自前で開発しています。ただし開発することはできても、その製造ロッドを維持していくとか、そういったところは非常に難しいので、組合員と生産者とで頑張って色々な取り組みをしています。現在、68品目のプライベートブランド商品があって、留め型(メーカー名を冠した特定販売先専用商品)と合わせると80品目ぐらいですね。これが完全なオリジナル品ということでやっています。

加工食品のPBに関してはほぼ無添加に近いような状態です。1,500品目と書いてありますが、これは着香料も含めてなので、指定添加物と既存添加物とで800品目くらいあるうち15品目以内しか使用していません。そのようなこだわりを持ってやっています。もちろん添加物を全否定しているわけではなくて、必要な添加物はもちろん使いましょうということですが、使わなくていい不要な添加物はできるだけ使わないということです。

こだわっているのが地域密着型です。これも小規模だからこそできるというところだと思いますが、先ほど見ていただいたように、宮城県内とあと山形、福島など隣県のところで、基礎食品として主要な商品は作っております。それこそ醤油・味噌なんかも宮城県美里町にある鎌田醤油、200年くらい続く醸造メーカーですが、ここは宮城県産の小麦と大豆を使って、醤油・味噌を仕込んでいるんですね。この小麦や大豆も産直産地の作ったものをできるだけ使ってもらったり、あるいはお豆腐とか納豆も仙台市内だったり、宮城県内の本当に個人経営の小さな小さな商店さんといったところの付き合いを大事にしていくといったところです。

・潔い品揃えで利用を結集

これはちょっと皆さんの資料にはないんですけれども、去年、一昨年くらいにアニマルライツセンターさんといったところから、うちの「放牧パスちゃん牛乳」という牛乳があるんですが、これを勝手に表彰しましたという連絡をいただきました。つなぎ飼いフリーで放牧をやっているということで、ここに非常に分かりやすい言葉を書いていただきました。「アニマルウェルフェアの高い放牧飼育の農場から1ブランドのみに限定しており、また牛乳の価格も一般の人が購入しやすい価格を実現していることを評価しました。また認めたものを1ブランドに絞るという潔い売り方も評価ポイントでした」と。

これは非常に我々をよく理解していただけたなと思っています。牛乳は1つしかないんですね。メインのお豆腐も絹豆腐と木綿豆腐が1つずつしかない。納豆も1つしかないというような形で、やっぱりプライベート商品を維持していくためには、利用の結集をしていかなければいけないですから、正確に言うと、他のものを並べて分散させることができない。そうすると維持ができなくなっちゃうので、そういう意味では1ブランド。潔いというのはそういう意味ですけれども、そういうような形で独自商品を何とか維持してきているということです。 

② 「産地直結(オーガニック)」のあいコープ

・生活まるごとのお付き合い

2つ目の取り組みは産地直結、まあ産直ですね。産直という言葉は最近、色々なところで聞くし、なかなか産直というのが、言葉として力を持たなくなってきているというのを感じているんですが、我々の産直というのは産地直送ではなくて、「産地直結」なんだよということです。先ほどの動画でも生産者が言っていたように、生活まるごとのお付き合いといったところ。ここら辺のところまで深いレベルの付き合いを目指してお互いにやっていますよということです。組合員交流なんかも非常に盛んにやっていて、田んぼとか畑の交流ですね、田植えや稲刈り、草取りをやったり、あるいは生き物調査だとか、色々なことをやっています。コロナ禍で活動が少し減っているんですが、それでも何とか継続しているというところです。

・独自の取扱基準

あとは種子法の問題から、種のことも学習しようということです。仙台市内に秋保町といって秋保温泉という温泉が有名なところがあります。宮城は砂地が少ないので、米どころというか田んぼが多いんですが、そこが結構、砂地でですね、なかなか野菜づくりに適した畑が少ない中で、非常に野菜づくりに適していて、あと気候的にも非常に涼しくて、色々な作物ができる。そんなところで在来の種を繫ぐ活動とか、子供たちと一緒にそういう活動もしています。

特徴的な取り組みとしては、オーガニックの推進ということで、有機とか農薬不使用の青果の取り組みを頑張ってやっています。この間、非常に取り組みを増やしていて、昨年度はもう26%くらいが有機JASあるいは化学農薬や化学肥料不使用といったところの青果物になっています。あいコープの農産は非常に特徴的ですけれども、このようなピラミッド、独自の栽培区分を設けていまして、一番頂点は有機JASです。ゼロ&ゼロというのは独自の区分で、農薬不使用ということになっています。これらが大体25%から3割くらいですね。残りの7割が基本的には特別栽培のものを扱っています。その特別栽培の中でも特に殺虫剤とか土壌消毒剤を使わないといったところ。その辺の取り組みをしたものをこのトライ・アイズという、これも独自のブランド。生産者が名称を付けてくれました。こういったような形でやっています。

特徴的なのはお米ですね。もちろん有機でやれれば一番いいんですけれども、有機じゃなくて例えば農薬や化学肥料を慣行栽培の半分以下にした特別栽培レベルであったとしても、あいコープの場合は殺虫剤を完全に不使用でやっています。ネオニコの問題とかもあいコープでは早くからやっていまして、もう2010年くらいから世界がちょっとネオニコってやばいんじゃないかみたいな、噂ぐらいのレベルになってきたくらいから識者の先生を呼んでですね、勉強会をして、2012年の時点でネオニコをお米ではすべて使用しないという形でやりました。またネオニコの問題だけを考えていてもイタチごっこになってしまうという点から、米については殺虫剤自体を使わないという決断を産地と一緒にしました。現在1銘柄だけ一部使っているものもあるんですが、99%の産直米が殺虫剤不使用でやっています。なので斑点米とか色々とあるんだけれど、それは組合員も理解して食べるという形をやっているのが特徴的です。

野菜はですね、なかなか完全に殺虫剤を使わないというわけにはいかないので、野菜の中でネオニコあるいは有機リン系を使わないものはトライ・アイズという部分でやっているんですが、まだこれくらいです。7割のうちの半分くらいがトライ基準で、残りの半分は通常の特別栽培。あとは一部のサクランボとか果樹なんかでは慣行で一部やっているものもあります。

あともう1つ野菜、青果品で特徴的なのが、これはあいコープのいわゆる商品カタログですけれども、防除のところに8分の4とか、トライのニラでは16分の1とかですね。これは何をしているかというと農薬の成分数を表示しているんですね。私も農産担当をやっている時代がありました。防除のカウントを産地と確認して表記を間違えないでやるという、そのための栽培歴を取り付けてとか、鬼のような確認作業が求められますが、たぶんこんなことをやっているところはうち以外にないんじゃないかと思っています。通常、宮城県の慣行基準がニラの場合だったら16成分使うけれども、あいコープでお届けするこのニラは1成分しか使っていませんよ、そういうような意味になっています。このようなところもちょっと特徴的かと思っています。

・ネオニコに続く脅威に対応

もう1つ言うと、今、ネオニコの問題、いよいよちょっと本当に危ないだろうということが世間的にも広く浸透してきたところがあります。最近では6月にアメリカの環境保護庁が、ついにネオニコの全部ではないですけれども、何成分かは規制対象としてEU並みの基準で進めるんじゃないかというようなニュースも話題として出てきていますね。

そういった中で実はあいコープの方は、もうネオニコどころかその次のステップに進んでいます。いわゆるトランスフォーム農薬とかが今、ちょっとずつ広まってきていて、それがスルホキサフロルとか4成分をここには書いていますが、ネオニコチノイド系農薬という分類ではないけれども、実態としてはネオニコと同じ作用機構、要するに同じ毒性とか環境影響を持つ殺虫剤ということで新しいものが出てきています。むしろ今までのネオニコは効かなくなってきて、こういった新しいネオニコ系のものがどんどん出てきているんですが、あいコープでは10月から、これらの殺虫剤もトライ基準では規制対象にします。

こういったことを6月に起案して、この間に産地と話し合いをして、来週ちょうど生産者に説明会を開催するんです。わずか3か月くらいで、トライ基準で今までやってきた人たちだけですけれども、全部の生産者と「こういうことを考えているんだけど、どう思いますか」、「何か影響はありますか」、「こういうようなのを使う予定はありますか」、「これを規制したらどうなるか」という話をして、トライ基準で栽培してくれている全ての生産者から「特に困らないよ、そもそもネオニコ使わないつもりだし、あとはネオニコと同じような毒性があるんだったらもちろん使えないし」というようなことで、じゃあこれも規制に加えましょうということで今回、規定を改定します。そういった本当にスピード感を持って、色々なことが普通は1年、2年掛けてやるようなことを3か月くらいでやっちゃうというかやれちゃうのが、小規模生協のあいコープならではの良さでもあるかなというふうに思っています。ちょっとやり方を間違うと乱暴になっちゃったりするので、そこら辺は注意しながらやっていますけれども。今そういったような取り組み、PBの「あいシテル」とあとは産直、オーガニックや減農薬の野菜、青果品。この2本柱を商品カタログやチラシ、動画などで紹介しながらやっています。 

③産直肉のあいコープ

で、いよいよ今日の本題のところですけれども、今年から3つ目の柱ということで、「産直肉のあいコープ」というのを掲げております。これは生産者、飼料、飼育方法、生産のところが明確な原料であること。我々消費者にとっては食肉流通のところが非常に不透明ですよね。なかなかブラックボックスで、食肉の業界は何が起こるかちょっとよく分からないところがありまして、そこら辺を本当にクリアにしたいということで挑戦をしました。

・なぜ自前の食肉加工場が必要だったのか

生協として自前で食肉の加工場を作ったんですけれども、なぜ必要だったのかといったところです。私たち、原料肉の豚と牛、それぞれ指定農家として豚が2軒、牛も2軒、農家さんとの付き合いを古くからしていました。その中でやっぱり自家配合の飼料をなるべく使ってもらうようにしていたんですね。その中心は豚であればお米ですね、地域の飼料米を中心にして、大豆とかコーンを使う場合もNO-GMOとかそういったことのこだわりとかを古くから行なっていて、100%はできていませんが、かなりの高い割合で国産だったり、NO-GMOの餌を使っています。

さらにはもちろん大豆とかの依存を減らすために、エコフィードですね、食品残渣の利用のところは、例えばパン屑だったら、私たちのパン屋さん、あるいは麺滓というかギョウザとかって、型を抜くと非常にロスが出ます。四角く作るのでそこから丸く型を取ると、周りの捨てる部分が非常に多いんですね。これも何とか有効利用したいということで、こういったものも豚の餌に混ぜたりすることで、PBメーカーさんにも参加してもらって、もちろんお米、飼料米を作る農家が中心だけれども、加工メーカーさんに循環に加わってもらう、そんな取り組みをずっとやってきたんですね。

そういった、まず生産のところがありまして、もう1つはですね、1頭買いの課題です。豚1頭、牛1頭丸ごとすべて使うんですね。そうすると必ず部位のバランスが悪くなっちゃうんですよ。だいたい皆さんもそうだと思うんですが、豚肉を買うときというのは、こま切れと挽肉をたぶん、一番使われるんじゃないかなというふうに思います。中には高級な部位しか食べませんという人もいるかもしれないんだけれども、やっぱりこま切れと挽肉が多いですね。そうなるとやっぱり、こま切れ、挽肉というのはスーパーだと安価、低価格ですよね。そうすると安めの部位をモモとかその辺を使いたくなるんですが、そればっかりが注文がくると、モモやウデが足りなくなっちゃって、高級部位のロースやバラ肉を使わなきゃいけないんですね。そうするともう、価格が滅茶苦茶になっちゃって、大赤字になっちゃうんですよ。あいコープでは以前は業者さんにお肉の加工をお願いしていて、ずっとそこを苦労してきたということがあります。

もう1つ、こだわっているのが、包装の形態はトレーを使わないということですね。ノントレーでやると脱気包装が必要なので、脱気包装機が必要になると。それにはそれなりの高価な機械が必要になるし、あとはしゃぶしゃぶ用とかそういった薄切り肉は真空包装でギュッと潰しちゃうともう、家庭で使うときに剥がれなくなっちゃうんですね。だから薄切りのお肉はガス充填するという形でやっていますが、これも設備とか手間が必要になる。

あと一番極めつけはチルド(冷蔵)供給が基本なので、そうなると近距離で加工ができて、運べるといったところが条件になってくる。これらの全部の条件を満たしてくれる食肉工場が宮城県はもちろんなかったんですけれども、近県においてもなかったと。今までは何とかこの条件でやってくれる工場を数年単位で綱渡りのように渡り歩いてきたんですが、今回いよいよ今までお願いしていたところの包装機が故障しちゃって、更新するのに数千万円掛かりますよと、あるいは1頭買いの部位調整というのが、世の中の豚肉の価格が上がってきている中で、非常に厳しくなってきたということで、撤退するということになりました。他には引き受けてもない、さて、困ったぞと。

・耕畜連携の地域循環

もう1つ、絶対的な条件としてさらにあるのが、先ほどからもお話しているように、あいコープではこの大郷町と田尻町(現大崎市)っていうところを中心にして、かなりそこの地域での循環型農業を作れているんですね。産直産地の飼料米だったり、養鶏さんの鶏糞とか、それを豚とか牛飼いのところの餌であるとか、あるいはPBのメーカーも入って、そこの堆肥を使ってまた田畑に還元してとか。なおかつこういった循環の中心にいるのが、社会福祉法人みんなの輪というところなんです。社会福祉法人みんなの輪はあとで詳しく説明しますけれども、今、生産のところ、牧場の事業もやっています。あとは先ほどの動画に出てきたような、豚の産地の田尻町のとなり町の大郷町というところで、そこの農家と一緒に、農家が作った米粉を使って、パン屋さんを運営しているんです。田んぼと畜産業、ここを中心に周りにPBのメーカー、もちろん組合員が集まっているというところもあって、今までの食肉加工をもう誰もやってくれないとなると、やり方としては、どこかで作っているお肉を調達してくるということしかないんですね。となると、やっぱりどこかで作っているお肉というのは、その人たちの古くからの繋がりだとか、関わりのある生産者がいて、そこではそれぞれが地域循環をしていたり、色々な関わりを持ってやっていますから、私たちの地域の循環ではないものになってしまうんですね。つまり我々が今までやっていた生産者の牧場とかを循環の輪をすべて断ち切らなければいけない。みんなの輪の畜産業もすべて閉鎖しなければいけない。それはちょっとできないよねと。

そして最後の決め手はうちのお肉は非常にというか滅茶苦茶、美味しいんですよ。今は社会福祉法人の牧場の話をしていたんですが、生産規模で言うともう1個の豚の牧場、日向農場というところが8割くらいで、みんなの輪の農場というのが2割くらい。その日向さんのお肉というのが本当に美味しくて、ちょっと脂が多めに作っているんですね。普通は脂って敬遠されると思うんですけれども、日向さんのお肉はですね、脂が本当にサラっとしていて甘味があって、臭みがまったく無いんです。だからあいコープで新しく組合員になってきた人が、一番最初にビックリするのが、豚肉を食べて驚いたと言う方が結構、多いんです。後は食パンを食べて驚いたとか言うんです。食パンもみんなの輪が作っているんですけれども。そういったような形で、組合員がやっぱりあいコープの美味しいお肉をこれからもずっと食べ続けたいんだ、と。

そういうことで、工場を自前で作ろうということになりました。先ほども言った通り、あいコープは非常に小さな生協ですから、今回、工場を作るのに、数字を出しちゃうと3億円くらいの建築費が掛かりました。本当にそれだけお金を掛けて経営が上手くできるのかとか、組合員さんから色々な心配の声もあったんですが、ただ本当にそれを考えても、自分たちでやる道を何とか模索しようということで進めました。

・「素人」の私たちが直面した課題

とはいえ、実際にやるとなると、私を含めてド素人ですし、食品工場なんかやったことがないし、ただ工場点検なんかで色々な食品工場を見てきた経験というのがあったので、ギリギリ何とかなったのかなと思っています。そもそも、工場用地を何処にしようかとか、設計のところを設計士さんにお願いしたら、本当に大きなお金が掛かっちゃうから、自分たちで設計しようかとか。あとは機材や設備に費用がいくら掛かるのかとか、職人さんをどうするのとか、衛生管理や手順など色々なことをゼロから全部やったといったところです。

その中で完全に自分たちですべてやるということは、なかなか厳しかったなと思っていて、本当に全国でも数少ない事例ですけれども、生協の中でも独自の食肉工場を持たれているところがあるんです。パルシステム連合会のパル・ミートさん、あとは生活クラブ大阪の関西ミートさんというところがあって、まずこの2つの生協さんに、お肉の事業を教えてくださいということをお願いしに行きました。行ったときに、皆さんに最初に言われたのが「吉武さん、やめた方がいいよ!」と(笑)。パルシステム連合会の理事長さんやパル・ミートの役員さんからも生活クラブ関西の専務さんからも、「やめた方がいいよ、本当に難しいし、大変だよ」っていうことを言われました。

特に、パルシステム連合会は大きな生協さんで、あいコープの100倍くらいの規模があるから、お肉屋さんを見に行っても、ため息しか出ないというかですね、すごいなっていう感じだったんですけれども、生活クラブ大阪の関西ミートさんは、うちの4~5倍くらいの規模だったから、私と専務理事の高橋が視察に行ったときに、「この規模でできてる生協があるなら、自分たちでも頑張れば何とかできるかもしれない」というのを持って帰ってきたんですね。そのあとは色々なことをパルシステム連合会、パル・ミートの皆さんに本当に色々と教えてもらいました。完全なゼロイチなら、こんなにできていなかったと思うんですが、その辺のところは、やっぱり生協の連帯というか、「やめときなよ」と言いつつ、「あいコープは本気みたいだぞ」ってなったら、本当に温かく、本気で教えてくださったんですね。そういったところで、パルさんや色んな取引先の皆さんの支援をいただきながら、課題を1つずつ何とかクリアしてやってきたといったところです。

この中でも食肉市場の業務なんかは、唯一誰にも教えてもらえなかったところです。というのは、生産者、牧場からの出荷業務というのは、生産者がやっています。普通、そうですね。私たちは、先ほど見てもらった、みんなの輪とか日向さんの農場というのは、そこまでの組織としての仕組みができてなかったから、今回の食肉事業では、牧場から食肉市場に送るところから生協が出荷人としてやっています。仙台では食肉市場でしか屠畜解体ができないですから、ここを通さなければいけない。まずは食肉市場に出荷して屠畜解体したものをすべて買い取るんです。そこで買参権が必要になるので、買参人の資格を取らなきゃいけないぞとか、それこそ請求伝票1枚1枚の名前から分からないレベルでした。どうやら仕切書というのが必要みたいだぞ、なんだそれ?みたいな(笑)。仕切書も何種類もあって、それぞれ違うんですけれども、伝票を1枚ずつ作るところからやりました。なかなか食肉市場というのが、言葉を選ぶのが難しいんですが、ちょっと閉鎖的な面があると言いますか、他者を寄せ付けない雰囲気に怯まずにまずそこで円滑に業務をやるというのも、当初は非常に大きな課題でした。

また食肉市場で解体した時に出る、不要部位の処理なんかでも、最初は戸惑いがありました。市場には市場の流儀があるので、その辺も色々と学びながらというか、関係を作りながら、今はその中でも円滑に業務ができるような形でやっています。食肉市場の皆さんはみんなとっても良い人たちです!笑

ちょっと話が逸れちゃったんですが、この中で特に、経営的なところで関わってくるのが部位調整のところ。あともう1つ大きいのが、今回の私たちの食肉加工場には、社会福祉法人の障がい者の雇用というのもやろうと。せっかくだったら、あいコープらしい食肉工場を作りたいから、豚自体を障がい者の皆さんがお世話をして、育ててくれているお肉をさらに加工までやっていただければ、もっともっと価値が生み出せるんじゃないかということで考えました。

・あいコープミートセンター

それで、これがミートセンターの外観ですね、去年の10月にオープンしました。食肉工場を建てることによって、何が変わったかといったところでは、今話した流通のところですね。あいコープは生産者と一緒にエコ畜産協議会という連絡会を作っていて、ここに豚の生産者、日向さんと社福のあいあいファーム、あとは牛の生産者ですね。繁殖農家さんも肥育農家さんも入ってもらっていますし、あいコープの職員ももちろん、参加をしています。

今の流通として、農場からあいコープが食肉市場に直接、出荷します。ここで管理し、屠畜解体して一次成形をしたお肉をすべてあいコープが買い戻す。それであいコープのミートセンターで社福の障がい者の皆さんも一緒に加工して、それを組合員に直接、供給することで、完全に一貫生産の流れです。うちくらいの規模でこういった一貫流通ができるところは、あんまりないのかなと言ったのが特徴的なところです。

ミートセンターで作っているお肉は、このような感じでちょっと見にくいんですが、通常のよく皆さんがご家庭で使うような200グラム、300グラムのスライス肉とか、ロース肉とかミンチとか、色々とやっております。先ほど部位調整の話をしましたが、やっぱり、こま切れ肉と挽肉がたくさん注文がくるんですね。最初、スタートのところでは、ウデ肉とモモ肉の安い部位がすぐになくなっちゃうから、高級部位のロース肉とかバラ肉まで、こま切れとかミンチ肉にしていたんですね。そうなると、もう大赤字なんです。かといって、こま切れ肉とか挽肉いうのは世の中的には、安めなイメージがあるから、値段をそんなに上げられないという、非常にそこが経営的なリスクの1つだったんです。要するにこま切れ肉とか挽肉ばっかり注文がくるということは、モモ肉とかウデ肉をいっぱい使いたい。で、モモ肉とかウデ肉をいっぱい使おうとすると、必ずバラ肉とロース肉が付いてくるから、どんどん余っていってしまうんですね。それが高級部位。それがロスになってしまって、経営的に厳しくなってしまう。

今はどうなっているかと言うと、その余ってしまうバラ肉とロース肉を冷凍加工品として作って、それで組合員に利用してもらうことで、しっかりとそれも適正な価格のお金に換えましょうと。これを何とかかんとか、それこそうちのような小さな規模の冷凍加工を受けてくれるような加工メーカーが本当に少なくて、探すのに1年くらい掛けて、何とか繋がったんですけれども、今は何とか繋がったお肉加工メーカーさんで、色々な商品開発がどんどん進んでいるところです。例えばバラ肉を使った「味付け豚丼の具」ですね、湯せんしてご飯と食べる。あるいは「冷凍パラパラミンチ」という使いたい分だけ使える商品とか、「味付けのロース肉」、これも鎌田醤油という先ほどお話したPBの醤油味噌メーカーさんの調味ダレを使っています。来週月曜日から供給が始まる新商品で、これもバラ肉を使った「味わい角煮」というのがあります。これは先々週、初回の製造で私も福島の工場へ行って立ち合いましたが、かなり、美味しいです。これも無添加のタレで作っていて、(某コンビニチェーンの「〇の角煮」)、名前を出しちゃってますけど、10人で二つを食べ比べをしたら、満場一致10対0であいコープの角煮が美味しいということになりました、ここだけの話です(笑) 

*社会福祉法人みんなの輪

社会福祉法人みんなの輪の説明をちょっとさせてもらいます。社会福祉法人みんなの輪、このように本当に大きな事業展開を今はすることができております。事業内容としては、第二種社会福祉事業ということで、大きく4つの事業を行なっています。今、宮城県内各地に18事業所があって色々とやっています。

沿革としては、1997年に私たちあいコープが関わって、小規模作業所という形で開所し、2002年に社会福祉法人になりました。このときにあいコープと小規模作業所、あとは何と生産者がここに出資して、それで社会福祉法人として立ち上げたんです。だから私たちあいコープの組合員と生産者が一緒に興した、これが社会福祉法人みんなの輪です。設立が2002年2月でこの20年、これだけ色々と事業をやってきました。

主な事業は先ほど4つと言いましたけれども、まず1つ、大きな軸が就労支援、これはB型ということでやっています。あとは生活介護とかグループホームとか、地域活動センター、相談業務。今、宮城県内の18の事業所全部で約800名、サービスを使われている障がい者の皆さんを利用者さんという言い方をしているんですが、800名に利用していただいているということです。ではなぜ、あいコープがこの社会福祉法人みんなの輪の設立に関わったかということですが、冒頭にお話した、あいコープの理念の4番目ですね。人と人との輪を大切にしていく。人と人の輪という時点で、みんなの輪の名前の由来が分かると思いますが、この理念があります。私たち生協の本来の目的は、社会を変えていくということだと思っていますけれども、その中の1つのあいコープの理念として、誰もが安心して暮らせる地域社会をつくる。これを実現するための1つの手段として、社会福祉法人みんなの輪というのを設立したということです。それも、「人・食・環境」というあいコープの理念を福祉という中で実現していこうと。

先ほど4つの事業がありましたけれども、就労支援ではあいコープ、生協がスキルを提供する。働く場所、仕事を提供して、そこに対価、B型なので、工賃という言い方をしますけれども、それを僅かですけれども、利用者さんたちが受け取って、働く喜びだったり、あるいは障がいの重さ、程度にもよるんですが、障がいが重い方というのは、ある意味、居場所として使ってもらってもいいですよと。それでもっともっと働きたい人は、ちょっと難しい仕事だけれども、工賃の高い仕事もあるよという、あいコープがお仕事として提供できる業務が、これだけあるんですね。

この左側の業務委託内容を見ると、先ほどの動画にもあった野菜の小分けとか、今だとお料理キットというミールキットですね。これの最後のセットアップ作業、パッキング作業ですね。あるいは今回のミートセンター事業。これはあとでちょっと話します。それ以外にも生協の配送に関わる資材が色々あります。保冷箱とか、あるいは保冷剤、蓄冷剤。その洗浄作業とか、あいコープの本部の清掃作業とか、そういったことをやってもらったり、あとは商品の供給、生産業務ですね、生産者としても色々、今はやっています。動画に出てきたパン製造だとか、あるいは今、イチゴの栽培とかもやっています。

イチゴの栽培は何でやることになったかと言うと、イチゴの生産者が宮城県の小牛田町といったところにいまして、そこは土壌消毒剤を使わない特栽レベルでイチゴを作ってくれる非常に貴重な生産者だけれども、高齢化と後継者がいないということでした。2人の農家さんがいたんですが、1軒がもう後継者がいない、もう辞めるしかないという状況になったんですね。そのときに、じゃあ、みんなの輪がそれをやらせてくれということで、色々と技術を教わって、畑もハウスも借りて今はずっとやらせてもらっています。

実は豚の農場もそうなんです。あいちゃん牧場という牧場は、実はあいコープがパイロットファームとして、当時の専務理事が、私は半分、趣味だったんじゃないかと思っているんですけれども、飼料米の活用をすることで、生産者の所得を何とか増やしたいという目的があったと思うんですね。じゃあ飼料米の行き先が必要だとか、あるいはアニマルウェルフェアといったところも、あいコープとしてもちょっと興味があるということで、実験牧場としてやったのが、あいちゃん牧場です。ただし生協でそれをやるとなかなか経営が大変で。それも実はみんなの輪が引き受けてくれたということで、実は県内の色々なところに事業所を展開するとことによって、そこに福祉と食と農(畜)とでどんどん関係が生まれてくるんですね。その受け皿のような形にも最近はなってきているところがあります。そういうわけで今、イチゴの栽培をして、イチゴは生食でも食べられるし、残ったやつをジャムにして加工して通年、ジャムとして販売するということで、工賃を利用者さんにお支払いしています。

あるいは2016年に「わ・は・わ大衡」という施設ができたんですが、そこは焼き菓子も、パティシエさんに入ってもらって、美味しい焼き菓子を作ったり、色々なことをやっています。この就労支援の中で、あいコープが提供するお仕事だけで約120名の障害者の方たちの就業を支援しているということです。その中に色々な商品があります。

中でもパン工房は組合員の皆さんたちから大人気です。これはあいコープのカタログですけれども、この2つ以外はすべて社福のパン工房で作っています。動画の中で工場長の櫻田さんも言っていたんですけれども、例えば区役所とかへ行くと、障がい者施設の方が何か授産品を販売したりしているじゃないですか。もちろんみんなの輪も、あいコープだけでは十分ではないので、やっています。けれどもこのパン屋さんに関しては、本当に仙台の街のパン屋さんを目指しているんだということを櫻田さんが掲げて、だから授産品のような、障がい者施設だから、ちょっと寄付の気持ちも込めてお買い物をするよということではなくて、パンとして美味しいパンを作ると。パン屋さんとして先に認知してもらって、実は福祉作業所で作っていたんだみたいなところを目指してやりましょうということで私達生協と一緒にやっています。

本当に今まで苦労をしながら頑張ってきました。ここでも色々な全国の生協、特にコープ自然派さんは、うちの方が先にパン工房は建てたんだけれども今では規模がうちなんかより遥かに大きくて立派にやっているから、今は色々と逆に教えてもらっています。この「あいシテル」の食パンを作るときも、私と櫻田さんでコープ自然派さんに勉強しに行って、教えてもらって開発したりして、そういう連帯の中で皆さんのご支援もいただきながら、今は本格的なパン屋さんになってきました。何と去年の売上がパン工房として5千万円ということになったんです。このB型の作業所の中で5千万円という売上というのは、本当にすごいことだなというように思っていますけれども、こんなふうな形になっています。 

*ミートセンターの動画

時間が迫ってきてしまいましたけれども、ちょっと最後に動画をもう1つだけ見ていただきます。ミートセンターの動画、3分くらいで終わりますのでご覧ください。(動画省略)

今、見ていただいたのがミートセンターですけれども、利用者さんというか、職員もそうですが、みんなの輪の職員も皆さんド素人だったんです。食肉なんてやったことがないし、そもそも私たちは福祉の仕事がしたくて入ってきたんだという人たちなわけです。ただその職員の皆さんにもミートセンターをやるっていうところの意義というか、価値を本当によく理解していただいて、まず肉職人になるということで、去年の夏から3か月くらい掛けてトレーニングを積んで、たった3ヶ月で肉をさばけるようになりました。もう今では本当にものすごいスピードで上手に切っていく、さばいていく。スライサーも訓練しながらやってきました。利用者さん、障がい者の皆さんも本当に色々な苦労がありました。最初の3カ月、半年くらいはトラブルがない日はありませんでした。今では何と、スライス作業を、今9人の利用者さんがいるんですが、このうち5名がもう、スライス作業ができるようになっています。スライス作業は3段階のレベルがあるんですね。1つは切り落とし、こま切れ肉ですね。ただ切っていく。それは比較的、簡単ですけれども、2段階目はいわゆるスライス肉ですね。3つ目は手切りがあるんですが、今、2段階目のスライスのカットまでできる利用者さんが、2人います。まだ8か月、9か月くらいですけれども。

それで本当に利用者さんもすごい技能が上がっていて、工賃もやっぱりミートはちょっと多めにあげられるような状態になっているので、社福の方の理事長さんと話したときには、初めて社福の目標とする工賃を2か月連続で、ミートに来ている利用者さんが得ることができたと。これはみんなの輪が20年経って初めてと言っていました。やっぱりそういうやりがいを感じて、もちろん食品製造なので、どなたでもいいというわけにはいかないので、それなりの職能レベルがある方にはチャンスとして、今後、使っていけるかなと思っています。 

*今後の課題

一方で課題です。ここにバッっと挙げました。まずミートセンターの経営安定はというと、一応、黒字は黒字で来たんですが、計画に対しては、まだ計画通りにはなかなか行っていないので、ここはもうちょっと頑張んなきゃいけないなと思っています。それでもまずは初年度、1年経っていないので、その中では非常に頑張れているんじゃないかなと思っています。

一方で今、やっぱり飼料価格の高騰、生産コストの高騰というのが大きな課題になっています。それに伴って原料価格があいコープの場合は、相場変動はしないと。1年間、通年、一定価格で生産者と取り決めした価格で買うことにしているんですね。それで2、3年前まではあいコープの買取価格の方が相場の平均値よりも常に高い価格だったんですね。1割から2割くらい高い価格だったんですが、今はちょっと逆転してきているようなときも日によっては出てきているから、ここは今後、非常に課題かなと思っています。その中でどうやって生産コスト、特に飼料価格を抑えるかといったところ。やっぱり国内産の飼料に、今までもそこを目指して100%行っていなかったんですが、今後もそこでやっていくしかないのかなと思っています。

最後にアニマルウェルフェアの推進ということですね。妊娠ストールの廃止。皆さんに資料がないんですが、ちょっと見ていただきたいと思います。これはアニマルライツセンターさんからお借りした資料、それを使わせてもらいます。養豚のアニマルウェルフェアのところで、一番課題だとされているのが、母豚の妊娠ストールです。日本の養豚場の9割以上がこのストールに入れています。これは非常に母豚にとっては過酷な状況です。私たちの牧場も繁殖をやっているんですが、妊娠ストールをやっぱり使っているんですね。ここを何とか課題として解決したいなというふうに思っています。

今、ヨーロッパとか欧米では、やはり妊娠ストールの廃止という動きがどんどん加速してきています。資料上、子豚の生育率も妊娠ストールを使わない方が高いんだよというデータはあるんですが、残念なことに日本でこれを成功している事例があまりないみたいです。というかほとんどないみたいで、私も牧場の生産者、みんなの輪の方には、この話を少しずつしているんですが、経営リスクとかを考えると、特に今、飼料価格が高騰して経営が厳しい中で、妊娠ストールをやめることでどうなるんだという不安が多いんですね。それをどうやって一緒に解決していくかといったところです。

実は日本の国内でも大手メーカー、日本ハムが2030年までに妊娠ストールをやめると言っているそうです。やはり大手だと、色々なDX化と言いますか、手間を掛けずにオートメーション管理をするやり方とか欧米ではあるみたいなので、資本を持っていると、そういうことがやりやすいのかなという気がします。私たちのような本当に個人経営だったり、小さな農村ではそこまでの資本がないので、人が管理するしかないとなると、妊娠ストールの廃止もなかなかハードルが高いんですが、あいコープとしては、組合員が牧場へ行くと、そこだけはちょっと悲しい気持ちになってしまうというのがあるので、何とか生産者と組合員が本当に対話をして、妊娠ストールを廃止する。それでも経営がしっかりできる。むしろそれによって、もっともっと組合員さんの利用を増やしていくというような、そういうような形でやりたいと思っているので、私としては、今後5年以内に妊娠ストールの撤廃といったところを目指したいなと今、思っています。

最後にこれはあいちゃん牧場の写真ですが、利用者さんが豚のベット(敷料)の管理をしている話ですね。これは餌を攪拌して作っている様子です。それで加工した餌を豚にあげると。こんな感じですね。あとは活性水。BMW活性水というのを私たちは使っています。これを使うと、本当に臭いがほとんどありません。ハエも少ない。本当に素晴らしい。BMW活性水というのは堆肥をもとにして、牧場で作っている、バクテリア、ミネラルウォーターという略ですけれども、この活性水が非常に気になっています。うちの産地はそれぞれプラントを持って、この水を使って生産物を作っています。土方仕事とか大工仕事も皆、手慣れたもんで、重機も今、2人の利用者さんが使えるようになったそうです。こちらは牛の世話ですね。牛が今、6頭だったかな、います。これは赤牛を飼っていて、ここの餌やり。ちょっとしたスペースしかないんですが、これも放牧しているんですよ。あとは地域からロールを回収している様子ですね。こんなことをやっています。

ということで、あいコープとしては、あいコープの理念である、誰もが安心して暮らせる地域社会を、というところをですね。子供も、障がい者も誰もが安心して穏やかに暮らせる社会、本当の意味での成熟した社会というか、そういう意味だとやっぱり家畜にも生態系にも優しい暮らし方、それを追い求めることこそが本当の意味での成熟した社会だろうということ。なかなか経済も弱くて、社会不安もあるという中で優しい気持ちになれない。余裕がなくなってくるという方向に社会が向かっていってしまっていると思うのですが、何とかそこを消費者が福祉を知ると。で、福祉の人たちが生産も農についても学び、生産と交流を通じて消費者と直接、繋がる。そこに他の生産者とか、色々な取引業者もちょっとずつ、そこに関わっていくことで、福祉のあり方、地域福祉というところに皆が少しずつ参加していく。それによって、本当にそこの色々な課題を解決するようなそういうやり方しかないんじゃないかと思っています。

色々な崇高な理念はあるんですが、やっぱりまず、私たちはできることを手の届くところから、ちょっと背伸びしてできそうなことを1つずつやっていくことで今、1万2千人の組合員しかいませんが、小さいなりにも全国の生協さんとか、メーカー、生産者とか、色々な支援とか繋がりの中で、課題を一緒に解決していけるんだということを本当に実感しています。ミートセンターの建設でさらに実感したんですけれども、そういったところの繋がりで、それぞれが地域で頑張っていくといったところが今後ますます大切になっていくのかなと思っています。あいコープとしては、5年以内の妊娠ストールの廃止ということで、私は個人的に頑張っていきたいと思っています。以上でございます。ご清聴、ありがとうございます。