2022年10月19日(月)から22日(木)にかけて、国連「家族農業の10年」の第1回世界フォーラムが、国連食糧農業機関(FAO)と国際農業開発基金(IFAD)の共催によりオンラインで開催されました。参加者は、国連機関、加盟国政府・機関、家族農家とその団体、市民社会団体、NGO、民間部門、メディア、学術界の代表者らです。日本からはFFPJ(常務理事の関根)が出席しましたので、概要をご報告いたします。
このフォーラムは、2022年6月に世界の5つの地域で開催された地域対話集会で議論された内容にもとづいて、2019年5月に国連「家族農業の10年」が開始して以降の成果を共有する場となりました。FFPJは、アジア太平洋地域の対話集会(オンライン)に2022年6月29日に参加し、日本における活動の報告や今後の活動方針に対する問題提起を行いました(こちらをご参照ください)。FFPJの発言内容は、このフォーラムにおいて、アジア太平洋地域の代表者によって世界に共有されました。
2019年に始まった国連「家族農業の10年」は、開始直後にコロナ禍に見舞われ、世界各地で活動が困難に直面しましたが、このフォーラムでは2022年現在の成果が共有され、次の活動期間(2023-2024年)で重視すべき方針や技術的側面が議論されました。それにより、よりよい生産、栄養、環境、農村コミュニティにおける暮らしを実現し、各地域独自の多様で回復力(レジリエンス)が高く、持続可能な農と食のシステムへの移行を加速することを目指しています。
4日間にわたるフォーラムでは、2019年から2021年の3年間の活動の成果の全体像が示されました。2022年9月現在、国連「家族農業の10年」の活動に参加している全国組織(家族農業全国会議、家族農業プラットフォーム等)は世界53ヵ国に存在し、2,625団体(農業団体、NGO、公的機関、研究機関等)が活動に参加し、そのうち1,853団体は家族農業団体やその連合組織です。日本では、FFPJが家族農業の団体として国連「家族農業の10年」の活動に携わっています。すでに、家族農業に関わる183の法律、政策、規制が世界各国で整備されました。そして、世界11カ国(ブラジル、コスタリカ、ドミニカ共和国、ガンビア、インドネシア、ネパール、パナマ、ペルー、フィリピン、シエラレオネ、チュニジア)で国連「家族農業の10年」のための国内行動計画が策定されました。さらに、3つの地域(南アジア、アフリカ・中東、中米地域)でも地域行動計画が策定されています。この他に、ヨーロッパのスペインとポルトガルを含む14ヵ国で国内行動計画案が策定され、日本を含む28ヵ国で策定に向けた準備が進められています(取り組みの状況についてはこちらをご参照ください)。
このフォーラムでは、国連「家族農業の10年」の世界行動計画の7つの柱の活動状況について、分科会形式で情報共有が行われました。各分科会で報告され、議論された内容はイラストボードで図解されました(写真は第3の柱:ジェンダー平等の分科会のイラスト)。
未曾有のコロナ禍やウクライナ危機によって、世界各地の家族農業、小規模農業は大きな試練を受けています。直面する数々の課題を解決する糸口はどこにあるのかという議論のなかでは、デジタル化等の新たな技術に期待する声も出されましたが、他方で「グリーンウォッシュ」(見せかけの環境保護主義)や民主的で公正な農と食の統治(ガバナンス)が脅かされることへの懸念も共有されました。
関根佳恵(FFPJ常務理事,愛知学院大学教授)