FFPJオンライン講座第30回、「編著者と語るシリーズ」第1弾として、「ほんとうのサステナビリティってなに?」を6月21日19:30〜21:00に開催しました。2023年3、4月に刊行された農文協の3巻本『テーマで探究 世界の食・農林漁業・環境』の主要テーマについて編著者・執筆者が語るシリーズです。全体のコンセプトについて池上甲一さん(FFPJ常務理事、近畿大学名誉教授)が解説。続くパネルディスカッションでは、司会を関根佳恵さん(FFPJ常務理事、愛知学院大学教授)が務めながら、パネリストの久保田裕子さん(FFPJ副代表、日本有機農業研究会副理事長)、宇田篤弘さん(FFPJ常務理事、紀ノ川農協組合長)と話し合いました。以下はそれぞれの発言の概要になります(本の紹介ページはこちら)。末尾に載せている動画もぜひご覧ください。
*池上甲一さん(企画者/近畿大学名誉教授/FFPJ常務理事)
常務理事であります池上からこの3巻本のテーマ、コンセプトについてご説明を申し上げたいと思います。スライドで説明したいと思いますが、見えておりますでしょうか。それではこれから10分ほど頂戴いたしまして、編著者と語るシリーズの全3巻シリーズのコンセプトにつきまして説明していきたいと思います。
最初に解説を入れるということの意図はですね、今、岡崎常務理事からもお話がありましたように、昨年、3巻本を農文協さんから刊行させてもらいました。その1周年を機に日本の農林家族漁業と国連家族農業の10年を再度、焦点化すると。そのために編著者と語るシリーズを企画しようということになりました。今回から5回連続の予定でありますけれども開催すると。で、第1巻からではなくて第2巻から始まったというのは、たまたま対談者の都合がちょっと合わなかったということであまり意図はありません。第3巻は林業と漁業が一緒になっておりますので、別々の回で開催します。それに加えて、この家族農林漁業とあるいは有機農業と大きく関連している学校での給食ですね。これの最初にどのような形で取り組んでいったらいいのかというような内容を同じく農文協さんから有機給食スタートブックとして刊行されております。こちらにもFFPJの常務理事が関わっておりますので、この編著者と語るシリーズに登壇してもらおうということになっております。
この解説の意図は、この3巻本が何を狙っていたのかということを今日ご参加の皆さんに改めてお伝えしたいと思っております。企画者・編者として企図した共通のコンセプトとその背景を説明し、意図どおりに読者に届く内容になっているかということを皆様がたにご検討いただければありがたいなというふうに考えております。
3巻の構成はこのようになっておりますが、第1巻が『ほんとうのグローバリゼーションってなに?』、第2巻が『ほんとうのサスティナビリティってなに?』という今日取り扱う巻になります。で、第3巻が『ほんとうのエコシステムってなに?』ですね。これはいずれも見ていただいたら分かりますように「ほんとうの・・・何」という形で、そういう問いかけが統一されています。副題でも第1巻だと「経済成長はみんなを幸せにした?」とかですね、第2巻だと「農業は自然にやさしい産業と考えていませんか?」というような形で副題にもそれぞれの巻を反映した問いかけをつけております。それからキーワードはグローバリゼーション、サスティナビリティ、エコシステムというふうにカタカナ語のままになっておりますが、日本語にするときの難しさということも少し意識しております。
この特徴を手前味噌ではございますが、5点ほど特徴を挙げてみると、問いかけで始めていますけれども、正解はないということ。2点目が考えるための素材と解説を充実させている。3番目に中高校生から大学生をおもな読者層に想定していますけれども、市民にも読んでもらえるだけの歯ごたえも用意しているつもりでもございます。4番目が広範なテーマと執筆陣。まあ農林漁業すべてを対象にするようなこういうタイプの本というのはないかなというふうに思っております。扱う問題もですね、扱うレベルも非常に多彩でございます。
それに対応して、執筆陣も研究者だけではなくて、農家や農協関係者、市民運動家、学生、新聞記者などなど、非常に多彩な方たちに執筆を引き受けていただきました。5番目の特徴が図表・写真をたくさん使い、目からも理解しやすくするということに努めたつもりでおります。3巻本の背景は後ほど、関根さんの方からも説明がありますので、簡単にいたしますけれども、2019年に国連家族農業の10年が始まりまして、すでに5年経ってしまいましたが、最初に開始した年にFFPJが結成され、同時に家族農林漁業の意義や実像を広く伝えるための発信媒体として何か印刷物を作ろうということになりました。その背景としては、やはり国際的に家族農業への注目が広がってきていたんですけれども、日本ではその点が非常に弱かった。政策に注目すれば、むしろ逆の方向を向いている。こういった中で家族農林漁業の意義をですね、将来を担う世代に届けたい。たまたまこのシリーズを検討している間に、2022年に高校地理が必修化された。これを追い風にしていきたいなということも背景としてあります。
そこで高校地理の必修化についてですけれども、今日、にわかですが、以前にも一度、確認はしましたが、今日、改めて見直してみると、なかなかいいことが書いてあるなと思いましたので、ここにもう一度、示してみました。で、高校地理の必修化に伴う狙いは、カッコの中に書いてあるような内容なんですが、その意義をですね、どのように現実化していくかということを考える上でもこの3巻本というのは、役に立つのでないかというふうに思っています。この高校地理の必修化では、地理総合と歴史総合が必修となり、発展的な学習科目として、地理探求、日本史探求、世界史探求というのが設けられました。この新しい学習指導要綱というのは、生涯にわたって探求を深める、主体的・対話的で深い学びをする、単独の知識にとどまらず、それを相互に関連付けたりして問題を発見し、自ら解決法を考えていく、創造する力を培っていくということで、生きる力を養っていこうということが基本的な考え方になっています。そういう探求のための素材と視角ということを本シリーズは提供しようということであります。
で、農林漁業を介して、探求する力をどのように養っていくのかということについて見てみるとですね、これは3巻本に共通する前書きに書いた点ではありますが、当たり前が当たり前ではない世界になってきている。従来の常識が通用しない。安い食料の確保はもはや当たり前ではない。それから平和が決定的に重要になっている。平和というものも与えられるものではない。こういう世界的な状況が起こっている中で、農林漁業の役割というのは、命と暮らしや、地域、流域、環境、生物多様性、文化、景観、いろんな面に関わっていて、非常に重要な役割を持っているということを発信していく必要があるだろうというふうに考えました。
3巻本の目的はここに記しました3つですね。多彩で幅広いつながりを理解する、小規模な家族農林漁業が果たす役割と不可欠性を新しい視角で示す、近代的食農システム、非常に問題や限界が来ているということが分かっていますけれども、それをどのように変えていったらいいのかということを話し合うきっかけ、この3点が3巻本の目的でございます。
で、簡単に答えを出せない問題を考える力をつけるために、どんな視角が要るのかと。このあたりにつきましても、後ほど、第2巻で具体的にどのような形で展開されたのかということについて、関根さんの方から簡単に報告がありますので、簡単にとどめます。正解を求める風潮、メリットとデメリットに分ける傾向、白か黒かをはっきりさせたいという風潮と言いますか、考え方が非常に強いわけですけれども、それに対する疑いを持つ、ですね。2番目に批判的な思考、クリティカルシンキングということで、情報を鵜呑みにせずに自分の頭で考えていく。その事実に基づかないと、論理もないわけですが、その事実自身が極めて多様性、多義的な意味を持っているということを見ていきたいということが大事だということですね。3番目が個人の問題と構造的な問題について、両方の面から迫っていく、アプローチしていくことが大事だろうということが重要な視角として編者として意識いたしました。それから4番目にできるだけ全体を見通す眼力を養おうということであります。
これが最後のお話になりますが、次回は7月20日から。また後ほど説明いたします。ということで、私の最初のこのコンセプトについての説明を修了したいと思います。引き続きまして、第2巻の今日の対談を、司会を担当する関根さんの方に譲りたいと思います。よろしくお願いいたします。
*関根さん
池上さん、ありがとうございました。それでは、ここから司会を担当いたしますFFPJ常務理事、愛知学院大学経済学部の関根佳恵と申します。よろしくお願いします。では画面共有をいたします。見えているでしょうか。はい、今日は、3巻シリーズの第2巻『ほんとうのサスティナビリティってなに?』という書籍について語るという企画になっております。私はこの第2巻の編集を担当いたしました。
簡単に自己紹介ですけれども、私は神奈川県生まれ、高知県育ちで、大学では農学、大学院で農業経済学を専攻しました。今、小規模農業や家族農業について研究をしていますが、そのきっかけになったのが、2012~13年に国連世界食料保障委員会の専門家ハイレベルパネルで、小規模農業に関する報告書の執筆陣に参加をしたことでした。こちらの日本語訳、全訳が2014年に農文協さんから『家族農業が世界の未来を拓く』というタイトルで出版していただいております。こういうことがご縁になりまして、家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンが2019年に市民社会団体として設立をされました。以来、常務理事としてこの活動に関わっております。
実は、農文協さんには2019年にもブックレット『よくわかる「国連家族農業の10年」と「小農の権利宣言」』という本も出していただいて、大変お世話になっています。私自身は農業基本法見直しの本も出していますが、この間、FFPJ としては、家族農業、小規模農業を重視するよう、あるいは近代的農業・政策を見直すよう政府に求めて活動をしています。でも、なかなか政府との対話だけだとすぐには変化が生じないということも経験する中で、やっぱり10年後、20年後の日本を確実に違う景色にしていくためには、今の子どもたち、将来の有権者の教育のあり方を変えていくことは、すごく重要じゃないかなと思いまして、『13歳からの食と農』とか、それを3分冊の小学生向けの絵本にした『家族農業が世界を変える』というシリーズを発刊することに携わったりしてきました。
ここからが今日のお話です。今日はこういう流れでお話をしていきたいと思います。まず本書発刊までの経緯ですが、今申し上げたように、2014年が国連「国際家族農業年」だったのですが、このときに『家族農業が世界の未来を拓く』という翻訳本を農文協さんで出版をしていただき、「家族農業の10年」が始まった2019年にこのブックレットを出版することができました。同じ年に家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンも設立をしているということで、この流れで、次は小中学生向けだということになりました。実は、2020年に今回の3巻シリーズの企画の原原案のような形で、最初は7巻シリーズを目指していました。でも、なかなか出版状況も厳しい中、農文協さんの方でも社内で色々ご検討いただいて、一時は、これを1冊の本にまとめて、大きな辞典のような形、調べ学習に使っていただくような副読本を作ろうという案が出ました。高校生から一般向けのものと考えていたんですが、こちらもなかなか上手く行かず、次に2021年に5巻シリーズで中高生向けにしようという案が出てきました。こちらも最終的にはちょっと難しいということになって、2022年に3巻シリーズとして現在のこの企画に結びついたんですね。
ですので、この企画立案で丸3年くらい掛けていまして、色々議論をしたり、私も途中、苛立ったりだとか(当時は失礼しました)、そういう色んなプロセスを経ました。結果として、2020年からコロナ禍があったり、2022年からウクライナとロシアの戦争が始まったりとかですね、ほかにも中村哲さん、ペシャワール会の中村さんが銃弾に倒れたりとか、あるいは、国連のWFPという機関がノーベル平和賞を受賞したりとか、色んな食と農をめぐる動きがあって、国内でも物価高とか円安の中で食料価格が上がったり、農家の方たちの経営が厳しくなったりとか、酪農危機とか、色んなことが起きました。その中で、一般の方の間で、「日本の食、農業ってこのままで大丈夫なのかな」「農村って、こんなに人口が減って大丈夫なのかな」とか、そういう意識がすごく高まり始めた時期とちょうと重なったんですね。で、先ほど池上さんからもありましたが、2022年から高校の地理総合という科目が何十年ぶりかで必修化されるというお話があったので、この2022年の3巻シリーズの企画が出来たときには、地理総合の副読本という位置付けにしようということになりました。中学生も頑張ったら読めるし、それから中学・高校の先生が教えるために使えるような、言わば大人向け、プロ向けのページも作るという企画になりました。実は3巻シリーズの企画が通ってから、発刊まで1年くらいなので、かなり皆さんに協力していただいて、原稿も予定どおり出していただいたという形で、出版にこぎつけることができました。本当に感謝しております。
本書の概要ですが、先ほど3巻全体については池上さんからお話がありましたので、私は2巻の位置付けということでお話したいと思います。2巻のテーマは『ほんとうのサスティナビリティってなに?』ということで、サスティナビリティというのは、日本語ではよく持続可能性というふうに訳されることが多いですが、池上さんは永続可能性と1巻の方で訳していただいています。これから次の世代にわたって私たちが生存できる、暮らし続けられる、そういう環境なり条件を社会的にどうやって実現していくかというところで、2巻は「SDGs」、それから「家族農業」、そして私たちの食卓から遡って生産現場を考えるとか、そういうおそらく中高生にとっては身近な話題、お寿司とかカップラーメン、ペットボトル茶、そういう素材を扱っているというのが特徴だと思います。
2巻の構成ですが、最初に「SDGs」の特集がありまして、次が「家族農業」ですね。このあたりはとても家族農林漁業プラットフォーム・ジャパンとして、世の中にもっと広めたいと言いますか、中高生にも一般の方にも知っていただきたいという内容になっています。それから、この「食卓から考える」というシリーズですね。そして「貿易と流通」「土地と労働」「テクノロジー」「社会と政策」という流れになっています。この赤字で示したところは、このあと論点として取り上げていくテーマになります。
2巻ではサスティナビリティを4つの領域で考えるというコンセプトを最初に出しています。最近語られるSDGsとか持続可能性というのは、ともすると気候変動対策とか脱炭素とか、そういうところを偏重している、重きが置かれている感じがするんですが、本来のSDGsや持続可能性というのは、環境だけではなくて、経済、社会、そして統治のあり方、ガバナンスですね。政治とか民主主義とか、そういうことも含めた概念なんだということを確認しています。
次に、論点の1つ目です。この本を取り上げるにあたって、色んな切り口があるんですが、1つ強調したいのは、「常識を覆す批判の書である」ということです。これは1巻、3巻でも共有している精神だと思っています。2巻について言いますと、まずSDGsについて論じています。SDGsと言うと、今は中高生もすごくよく勉強していて、17の目標を暗記したり、そういう学習をすることが多いらしいんですが、「SDGsは国連がやっているから正しい」とか、「政府がやっているからやらなきゃ」とか、そういうことではなくって、SDGsと言っていても、見せかけの環境保護主義、グリーンウォッシュと言われますけれども、そういうものになっている取り組みというのも少なからずあるので、それはちゃんと批判的に見る必要があるんだよっていうお話を最初にしています。それから、どちらかと言うと革新的な考え方を持っている方ほど、最近、「SDGsってどうせ大国とか多国籍企業によって歪められちゃってるんじゃないの」「何か怪しいよね」「何かお金儲けのためのキャッチコピーなんじゃないか」とか、そういう感じの評価が少し増えてきている感じがしています。でも、それに対しても、そんなに単純じゃないんだよというようなことで、実はこのSDGsの誕生の歴史をひも解いていくと、ラテンアメリカのコロンビアとか、グアテマラとか中小規模の国の女性の外交官が提案をしていたとかですね、それから市民社会の声を反映して、書き加えられていったとかですね、そういうところをちゃんと評価しましょうという話をしています。
それから、もう一つは「政府の政策イコール正しいではない」ということを伝えようとしています。これはですね、非正規雇用、ワーキングプアの問題とか、外国人技能実習生の問題、それから種子、スマート農業、フードテックとか農薬・化学肥料、食品添加物、ゲノム編集とかを題材に論じています。私のゼミの学生もゲノム編集のことで卒論を書こうとすると、「厚生労働省も農水省も皆、正しい、安全だって言っているので、安全な技術でもっと広めるべきだ」という、すごく短絡的なことを最初、調べて報告するんですが、「政府がやっているから正しい」「政府が安全と言うから大丈夫」ということでは必ずしもないんだよというような、批判的な視点を持ってもらえるような情報提供をしているという特徴があります。そこは特に類書と比較しても、中高生向けのテキストでこういうことを本格的に扱っている書というのは、なかなかないのではないかなと思っています。
それから「日本の常識イコール世界の常識ではぜんぜんない」んだということで、ジェンダーの話、それから日本では一次産業と農村で高齢化、人口減少が進んでいるんですけれども、フランスと比較すると、ぜんぜん日本の状況というのは当たり前じゃないんだとかですね、プラスチックがないと生活できないとか、プラスチックはリサイクルすれば大丈夫っていうことではなくてですね、脱プラスチックをちゃんと考えるとか、それから大規模経営が効率性が高いっていうのも、これは思い込みなんだということが、ちゃんとデータで出てきたりします。ほかにも貿易自由化が食料の安定供給につながるとかですね、日本の常識というのは必ずしも世界の常識ではないということを伝えています。
それから論点の2として、「心地よい答え」を提示しないということです。これはオムニバス形式の複数の著者が書いているテキストでよく起こることではあるんですが、本書でも実は、パーム油をめぐって、3人の著者が原稿を書いてくださっています。このパーム油がマレーシアとかインドネシアの熱帯雨林を破壊しているとか、野生生物のすみかを奪っているというお話が出てくるんですけれども、じゃあその解決策として、企業側が提案している持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)という組織があって、そこが認証を行なっているんですが、その認証の評価が実はこの3人の著者の方で異なりました。廣岡さんと小池さんは結構、ポジティブにRSPOを勧めて、消費者が選択できる状態が望ましいというスタンスなんですけれども、八木さんは、学校で開発教育をされる中で、RSPO認証ありきではダメなんだということで、個人の選択、消費者の選択に任せるということは、そういう選択をできない消費者に罪悪感を抱かせてしまうという問題があることを提起したり、あるいは認証が広まっても森林破壊が止まらない状況をどう考えるのかという批判的な視点も出してくれました。教師というのはどうしても、子どもたちが正しい答えにたどり着くように導こうとしてしまうんですけれども、本書では予定調和ではない、こういう現実の問題をめぐって、これだけ対立するというか、異なる意見があり、考え方があり、行動があり、主張があるんだということをまず知った上で、論理的に考える、批判的に考える、クリティカルシンキングということをテーマとしています。まさにこのパーム油をめぐる話題は、本当にこのクリティカルシンキングに使ってほしい題材に、結果的になりました。ですので、やっぱり自分事として、熱帯雨林の破壊とか、野生生物のすみかの問題とか、そういうことを考えてほしいという、それが本当のサスティナビリティを探すことにもなるんだという、そういうアプローチをしています。
それから論点の3番目は、「社会変革へのいざない」です。現状、こういう問題がありますとか、本当はこうじゃないんですよとか、そういう批判だけではなくて、じゃあ、どういうふうに、より良い方向に社会を変えていったらいいのかということで、市民社会とか、行政とか国連とか、科学者とか、色んな人たちが一緒になって行動を起こしたり、提案をしたり、実践をしたりしているということを紹介しています。国際レベルでは、それこそSDGsとか「家族農業の10年」、農民宣言というものが出てくるんですけれども、国内レベルでも農村政策とか、それから学校給食を有機に変えようとか、排泄と循環をもう一度結び直していこうとかですね。ただ下水汚泥利用については、重金属とかPFASとか化学物質の影響の問題があるので、そこにも注意を促しつつ、提案をしたり、それから自然エネルギー、地理的表示、世界農業遺産とかですね、みどりの食料システム戦略、こういう実際に日本で行われている、あるいは世界で行われている政策を取り上げて紹介しました。
最後に、本書を通じて読者の皆さんに、きちんと情報や分析視角に基づいて既成概念を覆すような論理的思考を獲得することで、社会をより良い方向に変えるチカラにしてほしいということを言っています。おわりにでは、「そのチカラを眠らせずに、自由に大きく育て、羽ばたかせてください。みなさんが手にしたカギで、未来社会の扉を開きましょう」というメッセージで締めくくられています。ちょっと駆け足でしたが、本書の概要と狙い、論点をご紹介いたしました。ここからは、編著者による対談ということで、この2巻の執筆をしてくださった久保田さん、FFPJの副代表です。
*久保田さん
こんばんは。
*関根さん
こんばんは。それから宇田さんです。FFPJの常務理事をしてくださっています。この3名でお話をしていきたいと思うんですが、最初に2巻に対する反響などなどということで、私の方から簡単にご紹介しますと、かなり色々なところでテキストとして利用していただいているということです。まず当初の目的だった高校ということで言いますと、二宮書店さんが、『地理月報』という高校の地理の先生を対象に書籍の紹介をする冊子があるんですけれども、そちらの方でこの3巻シリーズの特集を組んでいただいたりという形で、お勧めをいただいています。それから中学生、高校生を超えてですね、結構、大学とか大学院でもテキストとしてゼミで使ってますとかですね、授業で使ってますというようなことを聞いています。
ちなみに上智大学では、このテキスト全3巻をテキストにした科目(人気科目のため抽選となり、最終的に150人くらいの学生さんたちが受講)で、先月私も授業をしてきました。それから明日、ちょうど早稲田大学で久保田さんがこの2巻をテキストにした授業で、講師を務められるということですが、久保田さん、この点について。
*久保田さん
そうですね、やはり第2巻の執筆者楜沢能生先生によるオムニバス形式の「食と農の再考―持続可能社会への転換のために」というテーマの意欲的なものです。私はちょうど今担当したコラム14「有機農業の提携とPGS」という、今日と同じテーマで第10回目を担当します。
*関根さん
はい、ありがとうございます。そういう形で共著者の間で新たなつながりもできたりもしています。ほかにも福島大学の大学院の方で、結構、理系の院生さんが多いところでも、テキストとして使っていただいていたりします。それから私も今、勤務校で春学期、秋学期、全30回を通じて農業経済学のテキストとして全3巻を読み切るという、ちょっとハードな授業を4月から始めたところです。
ということで、次はテーマの②、コラム14「農と食を結び直す『産消提携』と『PGS』」についてご執筆いただいた久保田さんに、事前に参加者の方からコメントをいただいていますので、そちらを私が読み上げまして、そこからリプライを兼ねて、久保田さんにお話をいただこうと思います。じゃあ、いったん画面共有を停止いたします。それではですね、コメントを事前にいただきましたので、読ませていただきます。
仁賀里美さん、新日本婦人の会京都府本部の方でこういうコメントをいただきました。「私たち新日本婦人の会は、農民連の皆さんと産直運動に取り組んでいます。消費者と生産者が顔の見える関係でつながり、また主権者として農政についても共に声を上げていくことを大切にしています。今、SDGsが声高に叫ばれ、産直のあり方も様々になっています。その中で私たちの取り組みの現在地、と言いますか有意性、社会性、貢献的意義などをどう捉え、打ち出していくのかを考える機会にしたいと思っています」。こういうメッセージをいただきました。ありがとうございます。それでは、久保田さんの方からリプライとあわせてお願いいたします。
*久保田さん
はい、こんにちは。本当にいいご質問をいただきました。産直と、私が今、話そうとしている「提携」は、ほとんど重なっていますね。そこで、私が担当したコラム14の話から、どんな意義があるのかという、そういう話をしてみようとと思います。
コラム14は、農と食を結び直す「産消提携」とPGS―PGSというのはあとでちょっと説明しますが、参加型有機保証制度と訳しています。Participatory Guarantee Systemですね。これは、有機農業の話ですので、参加型で「有機」ということの保証、認証をしていこうという、そういう話です。
農と食を結び直すことがテーマになっていますが、そこが今、本当に重要になっています。消費者と農業の現場との間にものすごく大きな流通機構がバーンと居座っていまして、お互いに食べる人と農家の人がなかなか見えなくなっているのが現状ですね。都市化も進んでいますし。というようなことで、この産消提携や産直というのは、まず農と食を結び直すという非常に大きな現代的な意義があると思います。
なお、産消提携とは、「生産者と消費者の提携」という「提携」と同じですが、学術用語として使われてもので、現在、行政での呼び名でも、「有機農業推進基本方針と」の中で使われています。それから英語ではもう、日本の「TEIKEI」ということで通っています。これはCSAというアメリカでCommunity Supported Agricultureという、地域の中で、生産者と消費者が協力して分かち合う、農の恵みも農のリスクも分かち合うというような、そういう「提携」と同じような理念や方法を持った、そういう活動があるんですけれども、それが国際語としての英語ではCSAと言いますが、その中に日本の「提携」も含まれています。
さて、その「顔の見える関係」ということを質問でも使っていただいていたかと思います。作る人と食べる人が顔の見える関係を作り、双方ががっちりと手を取り合って、協同の精神、つまり互恵とか、相互扶助とか、そういう協同の精神で自分たちの食べ物を作り、分かち合う活動であるとも言えると思います。顔の見える関係というのは、まさに有機農業運動の中で、言われてきたことなんですね。遠いところではなく、近くで顔と顔の見える関係の中で、地域の中で、結びあっていきましょうという、そういう文脈で、有機農業運動の中で生まれた、そういうフレーズですね。
有機農業と共に日本で「提携」が発達したんですが、そこを見てみますと、日本有機農業研究会は1971年に結成されていますね。当時は、1961年に農業基本法ができて、農業の近代化ということで農薬が大量に使われたり、化学肥料も使われたり、それから大規模化が政策として行われたり、というような農業基本法の下で農業の近代化が始まった。それから10年経った1970年代初め、実はこの方向は危ないんじゃないか、持続性がないんじゃないか、永続的な農業というのはこの方向を進めて本当にできるんだろうか、と疑問が湧いてきた。それから消費者の方も、食品安全の問題が非常に大きくなっていましたから、そういうところで消費者と生産者が出会い、手をつないで、直に農産物を取り交わしていこうという活動が様々に自然発生的というとちょっと違うかもしれないんですが、生協の活動とか、協同組合の活動なんかを下敷きにして、できて来た。
そしてそういう取組みを先駆的に実践していたグループのリーダーたちが集まって、こうした活動は当時は産直というと、より良いものをより安く買おうというような値段の問題がかなり大きく出ていたことから、そういうような売ったり買ったりではないんだということで、じゃあ「生産者と消費者の提携」って呼ぶことにしようということで、この理念と方法の指針として、「提携10か条」というのを取りまとめた、1978年のことです。そこから日本の有機農業運動の「提携」運動が始まったんですね。
「提携10か条」とは、10項目にわたって、取り扱いの指針が書かれています。その第1項で、「生産者と消費者の提携の本質は、物の売り買い関係ではありません」と。「人と人の友好的付き合い関係」であると書かれています。人と人のつながりで、相互協力とか、信頼関係のもとに、命や生活の糧である食べ物を協同で作り、運び、食べる、そういう継続的な取り組みをしていこうということですね。そういうことで「提携」と言い始めたんですね。
この背景には、生協、農協、そういう協同組合精神、協同組合運動の伝統があると考えています。有機農業研究会を起ち上げた創立者の一楽照雄さんは、戦前は産業組合と言っていましたが、戦後の農業協同組合の農林中央金庫の職員、役員をされた農協人です。そういう背景もあって、生産者と消費者が食品の安全や、それから農薬の問題などで、手をつないだというのも、やはり協同組合同士というようなところが多かったわけですね。
これは戦前にイギリスの婦人ギルドという協同組合のポスターです。大正時代にできた神戸消費組合の家庭会の女性たちは、当時、こういうイギリスの生協の人たちとの交流を図って、こういうポスターなども持っていたということなんですね。
さて、ご質問にありました産直・提携の今日的意義というところに立ち戻りたいと思います。有機農業の多様な意義と重なり合うので、こうした意義は、たとえば家族農業、小規模な農家を守ることとか、食の安全の問題など、様々な問題があります。たとえば、これは私の家が毎週受け取っている「提携」の野菜です。季節ごとに畑で採れたものをそのまま、野菜ボックスというか野菜セットにして、届けてくれます。季節のものを食べるということが、今は少なくなってしまっているわけですけれども、畑で出来たものを丸ごと旬のものをいただくっていう、そんな感じですかね。
これはほかの農家の風景ですけれども、小規模の養鶏と野菜とそれから自給用の田んぼ、そういう小規模で複合的な有機農業をやっている人たちが「提携」ということで、消費者と直につながって、農家の食卓を消費者の食卓にそのままつなぐという、そういうコンセプトでやっているところが多ですね。こういう不揃いのものをそのまま分けてもらう。これは交流の風景です。地場・旬・自給、そういうことが重視されているということですね。
まとめとしては、グローバル・フードシステム、それに対して、有機農業とか産直とか地域の中での「提携」は、ローカルフードシステムを重視しています。その中で日常的に活動しているところが重要だということだろうと思います。それはモノカルチャー、遺伝子操作作物ではなく、先ほど言ったように有畜複合、小農であると対立的に考えることができると思います。それから科学や技術に関しても同様ですね。やはり、産直や提携というのは、大きなグローバリゼーションの大きな流れに対して、そうではないものを日常的に実現させていく手だて、方法だということが言えるかなと思います。
国際的な「提携」やCSAの連携の組織というのも出来ています。そこでは、Food Sovereignty、食料主権も重視されている。これはPGSのことを熱心に語っているところです。それから種が大事ということで、これはURGENCI=国際CSAネットワークの国際会議が2018年にギリシャで開かれたことがあり、私も参加しました。そのときに、皆で種を持ち寄って、「種まんだら」を作ろうということで、みんなでつくっているところです。種が大事っていうことも、実践的に目にみえるようにしていくことが大事、そんな感じですね。
というようなことで、PGSの話まで行けませんでしたが、地域の中で、皆が参加する中で、農家が提携したり産直したりするということが、非常に重要だなと思います。
*関根さん
はい、ありがとうございます。もう明日の早稲田大学の授業を聴いてしまったような、大変充実した内容で、ありがとうございます。ちょっとですね、時間が押してますので、次の宇田さんへのご質問に移りたいと思います。それではテーマの3に行きまして、コラムの4をご執筆いただきました宇田さんにご登場いただきます。宇田さんも紀ノ川農協さんとして生協の産直事業に長年取り組まれているので、1つ目の仁賀さんのご質問にあわせてあとで、お答えいただければと思います。
宇田さんにはこの第2巻のコラム4で「農業協同組合がSDGsに向けてしていること」というテーマでご執筆いただきましたが、今回の学習会にあたり、愛知県犬山市議会の鈴木伸太郎さん、議員さんですね、事前にコメントをいただきました。「名古屋近郊の町で、小規模家族農業をやっています。なるべく農薬を使わない野菜作りを目指していますが、心が折れそうなときはあります。高温多湿な日本で、国が掲げる有機農産物の比率って、実現可能なのでしょうか」ということで、農地の25%が可能でしょうかという、現状が0.6%ということなので、ということだと思います。「現在の流通体系では、農家は絞られるばかりで、大規模農家には補助制度がありますが、小規模には手厚いサポートはありません。議員という仕事柄、新規就農の相談も受けますが、大都市近郊の農地で、農業での自立、有機の実践は、正直、お勧めする自信がありません。理想と現実のギャップを感じています。そのギャップを埋める制度を構築していくのが政治に携わる者の仕事なのですが、有機、小規模、自給、それぞれのキーワードをマッチングして、従事者がハッピーな気分で暮らしていくことができるアイデアがなかなか思いつかない」ということです。農業と福祉というようなことも取り組んでいらっしゃるということなんですけれども、宇田さんは中山間地域のですね、和歌山の色々な地域もよくご覧になっていていますが、こういう都市的地域でも実はすごく厳しいというお話だったんですけれども、こちらの2巻にご執筆いただいた内容の簡単なご紹介とあわせて、リプライをお願いできればと思います。あわせて先ほどの産直に関するコメントにも可能でしたらリプライをお願いいたします。よろしくお願いします。
*宇田さん
皆さん、こんばんは。FFPJの常務理事と、それから紀ノ川農協の組合長をしてます宇田といいます。どうぞよろしくお願いします。紀ノ川はですね、販売の専門農協なんですね。もともとは先ほど農民組合の新婦人さんの産直もありましたけれども、私どもは農民組合の構成団体にもなっているんですけれども、当初、任意の農民組合で、先ほど久保田さんからもありましたように、特に大阪、奈良などの地域で生活協同組合が、お母さんらが起ち上げて、産直が始まった頃に、私たちも当初は農民組合でしたけれども、1983年に農業協同組合を後から起ち上げた、金融・共済はしない販売の専門農協ということになりまして、圧倒的に生活協同組合さんとの産直が事業の中心になるような農協です。で、和歌山全体を地区とするというのは1つ大きな特徴でもあるんですけれども、生協さんが発展していく中で、一緒に育てていただいたみたいな農協になっています。
ただきっかけがですね、これはまあ、戦後の農政の選択的拡大ということになるんでしょうけども、和歌山は特に果樹生産が金額ベースでも全体の61%くらい占めるくらい、果樹の生産がものすごく多いんですね。1970年代に入って、ミカンの大暴落があってですね、そこからもうミカンだけでは生活できないということで、奈良県の当時、ちょうど50年くらいに皆さんなるんですが、生協のお母さんらが起ち上げた生協とつながりが出来て、そこから産直が始まった。だからミカンから産直が始まっています。その中で色んな要望が出てきて、トマトが欲しいとか、野菜も欲しいということもあって、果樹の産地ではあるんですけども、玉ネギとかトマトとか、キュウリとか、そういったものも要望に応えて作ってきたというような歴史があります。生協産直の中では当初はこの安全なものを食べたいっていうふうな取り組みが多かったんですよね。ですから農薬を減らす、化学肥料を減らすということで、特に消費者さんからみると、見栄えではなくて、中身をもっと重視してほしいっていう、安全でまあ形はいいですと。規格も少し幅があってもいいですよというようなことですね。そういう作り方に転換していったんですね。
当時はちょっと曖昧な表現があって、低農薬有機栽培とかっていうような表現をしてたんですが、JASの基準が出来たりしていく中で、そういう表現がなくなってはいったんですが。で、農協になって、生協さんもどんどん大きくなっていく中で、仲間を増やしていこうというようなことで、紀ノ川農協の考え方としては、1人の人が百歩進むより、多くの方が1歩進んで、より安全なものへ変えていこうよということで、非常に議論したんです。増やすべきか、グループでいくべきかということがあったんですが、その農協を作って、また仲間を増やしていこうというようなですね、で、結果的に和歌山全体を地区とするということになってしまったんですけども。
で、当初の産直の取り組みが概ね50年経って来るんですけども、だいぶ中身が変わってきたというふうに思います。これは世の中が変わってきたからというふうに今、思っているんですけれども、生協産直の中では、3原則ということで、生産者が明確であるとか、栽培方法が明確であるとか、それから交流ができるというような、この3つを今も生協さんはだいたいこれを基本に原則として見ているんですけども、ただこのことが今、私もすごく変わってきていると思ってですね、ちょうど2016年あたりからもう一度、紀ノ川農協はどんなふうに進んでいったらいいかということで、どちらかというと、この栽培方法が明確であるとか、それから交流ができる、生産者が明確というのは、消費者から見た印象が強いんですけども、それをもう少し、産直ということで、俯瞰的にというか、両方見た、じゃあこれをどういうふうに考えていくべきかということで、栽培方法が明確であるだけでなくって、その栽培の方法がですね、持続できるような環境保全型農業であるとか、そういったものを進めている。現に生協さんもこういうふうなことを明確に書いてある生協さんもあるんですけども。
交流ができるというところも、ただ単に点と点だけでなくって、生活協同組合さんの方も、結構、組織率が30%、40%に近づいているような生協さんもありますし、面というか地域と、その産地地域との、そのつながりというふうに変わってきていると思います。10年くらい前までは、産直商品というような言い方で、商品を中心に見ていたところが、産地指定という、産地とのお付き合いをしていくんだと、こう切り替わったところもですね、出てきました。結構、関東の大きな生協さんの中でも、そんなふうに捉えるように変わってきました。
それから、生産者が明確であるということが、ただ分かるということだけではなくって、消費者の方からもっと見ていただかなきゃあかんのが、やはり高齢化しているということと担い手が減少しているということなので、その産地の中の生産者が明確である以上にもっと、今後どういうふうに生産者がなっていくのかということもよく分かるような関係をですね、作っていかなきゃいけないということで、担い手が育成されてるとか、それから多様な担い手ですよね、そういったことがちゃんと見えて、つながって、一緒に取り組んでいるかということが、これからの産直の1つの原則になっていくんやないかなということで、この間、紀ノ川農協の中では、生産力向上委員会、これは担い手を育成していくということですけども、それと環境保全型農業推進委員会ということで、持続可能な農業へ発展させていくような栽培方法、それから交流委員会ということで、単に生産者と消費者だけでなくって、地域と地域ぐるみで交流できるような、生協さんの中にも、今、地域貢献ということで、単に産地だけじゃなくて、産地の地域全体と関わっていこうというような動きも、まさにこのSDGsの中で、取り組まれているところも現れてきてます。
そんなふうに紀ノ川農協の中にもそういう専門委員会をこしらえて、次の産直を発展させていこうということで、今、取り組んでいるんですが、先ほどのコメントで、非常にまあ大変な局面には来ていると思います。何よりも生産者が高齢化しているということと、それから急速に減少していっているということで、今後、20年間に今、116万くらいの基幹的農業従事者が30万くらいまで減ってしまうということで、私の住んでいるところを見渡してもですね、おそらく5年から10年の間には、基幹的な農家の方というのが半分くらいに、このままでは減少してしまうのではないかなと今、見ています。これをじゃあ、どうやっていこうかということで、結局、経済的に成り立つかどうかって考えてしまうと、やっぱり難しいんですよね。和歌山県の資料を見ても、再生産できる価格にほぼほぼ皆、なっていないんですよね。色んな品目がありますけれど、その再生産なっているのがほんのわずかです。基本的には全部赤字ってなっていて、そこだけで見て考えていくと、やってられない、できないってなってしまうんですけども、でも今、農業へ向かっている方の暮らし方、生き方の中に、今まだ私たち紀ノ川農協は、トマトとか玉ネギとか、たくさん作って、生協さんにお届けしていこう、これは大事なんですが、それだけ見ていると、なかなか担い手が育っていかないんです。
でこれは今、トレーニングフォームというのをこしらえて、年間5人くらいがもう限度なんですが、新規就農者を育成するといって取り組んでいるんですけれども、でも今までのような玉ネギをたくさん作ってとか、トマトをたくさん作ってとかって方は少ないんですよね。田舎に来て、暮らしをやはり楽しんでいく。自由にやっぱり生きていきたいという方が増えてきているんですよね。そういうことで、今、地域の中で、生協の方にもっと、来ていただいて、距離を縮めて、関係していただく人をもっと増やしていこうということで、今、新しい取り組みを始めています。で、その中から、貸し農園であったり、体験農園であったり、また異業種の方と滞在できる空間を作ったりとかということを今、やっていこうということで、新たな取り組みをやっていこうと考えています。
そうすると、何が変わってきたかというと、若い方が期待というか、できるやないかなということをね、思い始めているんです。周りのお年寄りの方も、なんか楽しそうよねっていうのが出ているんですよね。まずこのあたりが大事かなって思うんです。上手くいくかどうかは正直、私も分かりませんけど、皆がなんかできるんやないかなという期待を持って、動いていけるようにできるかというところがまず、大事で、そのためにもたくさん来ていただくようなことを今、始めています。
最後になりますけど、2011年に震災のボランティアに行ったときに、おばあちゃんがですね、岩手でしたけど、何が怖いかって言って、私たちのことを忘れられることが一番、怖いっていうふうに言われているんですね。震災、この前もありましたけど、急激に地域が破壊されますけど、実は今、農家というのは、農村というのは、徐々に徐々に壊れてきていますので、同じだと思うんですね。そういう点で、農家の方たちが、消費者の方たちが関わって、寄り添って、また私たちも消費者の方に寄り添っていくという関係を作っていくということがまず一番、大事な点かなと。そうすることで、何かしら可能性がやっぱり出てくるんじゃないかなということで、大変ですけど、頑張っているところです。以上です。
*関根さん
ありがとうございます。そうしましたら、ちょっと時間が押してきてしまいましたので、質疑応答のところでまた鈴木さん仁賀さんには、もしよろしければご発言をお願いできればと思います。それではここで、出版社の農山漁村文化協会の方から、今日は3巻シリーズ全体の編集に関わっていただいている阿部さんと、2巻の編集を担当してくださった阿久津さんに来ていただいていますので、この本にシリーズにかける思いとかですね、それから出版のこぼれ話みたいなものも、もしあれば、あわせてお願いできるでしょうか。よろしくお願いします。
*阿部さん
ありがとうございます。今日は農文協からは阿部とあと、阿久津ですね。2人参加しております。一応、私もFFPJ の会員で、会費を払っているだけですが、ときどき岡崎さんに催促されたりですね、ということなんですけども、今回、どんな思いで出版社側として、企画を受け止めたかということと、それをどんなふうに、結局、ページに落とし込んでいくというか、形にしなければならないので、そこの部分を阿久津が中心にやりましたので、2人で少し、話をさせていただきたいと思います。
先ほど、関根先生のスライドを見てですね、私、ずっと冷や汗をかいてまして、池上先生、関根先生、それから斎藤博嗣さんに、この企画を持ってきていただいたときに、そのあと3年間、混迷しておりまして、しかもその巻構成がくるくる代わるということで、そこの責任は私にあります。ちょっとその申しわけを言うような形になっちゃうと思うんですが、とにかくやりたいという気持ちは、関根先生が2014年に翻訳本を手掛けられて以来ですね、家族農業の意義ということは、農文協は受け止めてきましたし、私はブックレットの編集を担当しましたので、そんな中で小中学生にまずは、最初は小中学生だったんですけれども、よくわかるようにSDGsというのは実は家族農林漁業があるから実現するんだということですね。そのことと平和ということも関わってくる。平和もやはり、まっとうな農林漁業が世界でその土地その土地で成り立つことによって、保たれるということですかね。そういったことを本にするということはすごくいいなと思ったんですけど、じゃあ、はたしてどんな形にしたらいいかというところで、長らく混迷が続いてしまいました。もっぱら編集者側の理由です。
まあ何でしょう。SDGsって2020年レベルではもう、すでに普通に言葉としては定着していったし、本もたくさん出てたんですね。ですが、実際に授業としてやっているのは、17の目標をみんな覚えて、じゃあ明日からこの1番の目標について何をやるみたいな話を報告させるという、そこまで悪くなくても、それに近いような授業がやっぱり行われていたと思います。そんな中で、高校生に、小中学生はちょっと厳しいかと思って、難易度からすると高校生、できれば中学生くらいも、頑張れば読めるような本を何とか作りたいなということで色々模索した結果、最終的に3巻構成ということになります。
今回の第2巻の「ほんとうのサスティナビリティってなに?」っていうのは、第2巻のテーマでもあるけれども、3巻に共通するテーマ、底を流れるテーマではなかったかなと思っています。そんなことでですね、まあ最初に池上先生の話もありましたように、ちょうど地理総合という教科が出来て、地理総合っていうのが、グローバルとローカルをつなぐという素晴らしい視点があるんですよね。もう一つは、最後には自分たちの高校のある生活圏で探求をして、そこで地域を変えていくっていう、そういう単元まで用意されている。まあ、じゃあ実際にそういうふうに授業が行われているかどうかは分かりません。なかなか難しいと思います。ですが、そういう目標を持った教科が必修科目として取り上げられた。ここを逃す手はないなっていうふうに思いました。それに照準を当てたのが結果的に大成功だったのではないかなと思いますし、そこを実現するについてはですね、池上先生がモデル原稿を書き、そして関根先生をはじめ、たぶん皆さんが編著者が著者を発掘して、実は2巻だけでも32人も著者がいまして、なかなかこれ、原稿を依頼するとですね、3分の2くらい断るんじゃないかなと思っていたんですけれども、あにはからんや、ほとんど断られないんですね。それは池上先生がモデル原稿を書いてくださって、あとで、このあと阿久津の方でお見せしますが、こんな誌面になるんだよっていうイメージがあったこともあるんですけども、ぜひこの企画に参加したいと、とても皆さん喜んで執筆、かなり著名な方もいらっしゃるんですけれども、忙しい中を書いてくださったということで、あとはスムーズに進んでいったという次第です。そのスムーズに展開していった後からは阿久津が報告します。よろしくお願いします。
*関根さん
では阿久津さん、お願いいたします。
*阿久津さん
はい、阿久津と申します。私、この2巻を担当いたしました者です。先ほど、関根先生のスライドのところで常識を覆す批判の書であるとか、あと心地よい答えを提示しない、それから社会変革へのいざないを促す書であるというふうな特徴をお話いただいて、まさにその通りだと思っていたんですけれども、ただ実際に形に落とし込むというときに、どうしようかなというのが、ちょっと考えていて、なので、それがどんな形になったのかを見ていただこうと思いまして、これは皆さんとも共有してるんですが、チラシでですね、ちょっと見ていただければと思っております。ではご覧いただけてるでしょうか。
*関根さん
はい、見えます。
*阿久津さん
ありがとうございます。これがですね、先ほど、パーム油の話でですね、色々意見が筆者の中で分かれましたというところの誌面の一部なんですけれども、これがカップラーメンから考える世界のつながりということで、カップラーメンの中身はいったいどこから来たの、というのを1つの教材にしまして、それがインド、ミャンマー、バングラディシュとか、色んなところから来ています。その中でも油を揚げているパーム油というのがあって、それは実は安いからといって使われているのですが、非常に実際には、環境破壊をする問題のものであるということをより深めるというような形で、最初にどこから来ているのか知っていますかっていうことで、身近な質問から入って、少しずつ深堀するという形で、なるべく自分の食卓のところからさらに先を考えていけるような構成にしていこうということで、見た目は非常に柔らか、イラストも使ったりとか写真も使ったりっていうことで、割と入りやすいようにはしたんですけれども、そこから先、考える手立てとして、最初のキークエスチョンというところから入って、そのあと調べてみようという、自分の実際に調べるときにどういうテーマがあるかということをしたりというコーナーも作ったりですとか、あと参考文献として、さらに調べるときにどういうことができますか、ということって言うので、色々自分の足元からグローバルな世界を考えるにはどうしたらいいかっていうふうなことを考えながら作りました。
で、先ほど、2巻だけで30何名の先生がたにということなんですが、3巻全部を通すと、実は80名の先生がたにご執筆をいただいていて、本当にこれだけの先生がたと一気に関わるということはなかったので、なかなかに緊張する1年間でありました。それからですね、あと先ほど、久保田先生とそれから宇田さんにお話しいただいたんですけれども、そこがコラムという形で落とし込まれております。そこのところでも、なかなか1つ1つの事象に対して深く知るということができないので、いくつかあるんですけれども、ここの認証のところでは、パーム油の学習について、ファシリテートする側は何を考えなきゃいけないかということを八木さんに書いていただいたりということをしております。特にですね、何て言うんでしょう。非常になるべく私たち版元としては、たくさんの方に俎上に農業を考えてほしいっていう思いがありますので、なるべく手に取りやすい形でってことを考えて、やりました。ですが、実際に読んでいくと、なかなか手ごわいと言いますか、歯ごたえのある内容に出来たのではないかなというふうに思っております。ありがとうございます。
*関根さん
ありがとうございます。よろしいですか、次のページとかは、大丈夫ですかね。
*阿久津さん
はい、ありがとうございます。
*関根さん
それではですね、10分弱くらいなんですけれども、質疑応答の時間を設けておりますので、チャットの方にですね、ご質問など、ご参加いただいている皆さんは、よろしければ入力して送っていただければと思います。それを待っている間に、事前にコメントをお寄せくださった仁賀さん、もしさらにここを聞きたいとか、何かもしありましたら、マイクをオンにしていただいて、よろしければお顔も出していただいて、ご発言いただければ思いますが、いかがでしょうか。
*仁賀さん
はい、京都から参加しています仁賀といいます。今日はご紹介いただいて、ありがとうございました。関根先生には給食の集会でもお世話になって、給食と有機農業の話を聞いたことがあります。やっぱり私たちがやっている産直運動というのは、私たちの願いで進んでいることで、答えがあるわけではないっていうことが今日、あらためて分かって、宇田さんが進めてこられた産直のことですとか、久保田さんがおっしゃっていただいPGSっていって、参加してこれから作っていくということに1つ1つ取り組んでいくしかないのかなっていうふうに今日は思いました。ヒントをたくさんいただいて、ありがとうございました。
あと1つだけ、教育のことで言うと、高校生の地理の話が出ていましたけれども、実は私は中学生の子どもがいてるんですけど、家庭科の教科書なんか見ると、食生活とか色んな単元があるんですけど、その最後が絶対、持続可能な、例えば食生活とか、持続可能な単元のテーマというのがどの章にも出てきていて、中学生も今、こんなこと考えてるんやなって思うんですけど、やっぱりそれがなんかSDGsが環境の面しか言ってないみたいな、もっと本当は民主主義とか社会全体に関わる概念なのに、持続可能性ということがすごく狭く捉えられて、子どもたちに教えられるというのは、すごい今日、残念やなって思って聞いていました。高校生になるともうちょっと幅広く自分たちで考えられるんでしょうけれども、そういう教育がやっぱり小学校や中学校から始まっているので、そのときにもう、一定イメージが植えつけられないといいなってことを、今日、お話を聞きながら思いました。どうもありがとうございました。
*関根さん
ありがとうございます。実は家庭科も、エディブル・スクールヤードとか、学校で菜園をしながら調理をして、コンポストをまた土に戻してみたいなことをやっていたりする学校もありますね。私が上智大学で先月、担当した科目は共通教育で、もとは保健体育というカテゴリーの科目なのですが、体を作っているものというのは食べ物なので、その食べ物が今、どうやって作られているのかということで、「食と農と身体」というテーマの新しいオムニバス科目として、編成され直しています。まさにアグロエコロジーとか、食料主権とか、持続可能性を取り上げているんですが、教育を縦割りではなく、全部つなげる教育を本当に小中学校から高校、大学まで、あるいは社会人まで、学べる環境が出来ていくといいなと思いました。仁賀さん、ありがとうございました。
それではですね、先ほど、コメントをいただいておりましたお2人目の鈴木さん、もしいらっしゃいましたら、よろしければご発言ください。こんばんは。
*鈴木さん
どうもこんばんは。愛知県犬山市の鈴木と申します。紀ノ川の宇田先生、どうも色々ご指導、ありがとうございました。いただいたお言葉の中で、たぶん私の解釈と違うかもしれんけど、たぶん1人がたった1人でバーンと進むよりも、多くの人が少しずつ進むことがいいんだよっということにちょっと救われた気はします。ただやっぱり、最初のコメントにも書きましたけれども、いきなり有機というのは本当にハードルが高いなと私も思ってまして、環境保全型農業と言う言葉もいただいたんで、そこらへんを指針として、やっていきたいなと思いました。
あと今日の言葉の中で食料主権という言葉を新しく私は知りました。まあ私は議員として、これが出来るかどうかは分かんないんですけれども、例えば、よくある平和都市宣言みたいなことがあるんですけれども、食料主権都市宣言みたいなことが出来るかどうか分かんないんですけれども、要は地産地消で、100%は無理だけど、基本的には地産地消でウチの町は頑張るみたいな、そういう宣言が出来るようなのも、ひょっとしたらありかもしれないなと思って勉強させていただきました。これからも、色々取り組んで参りますので、ご指導をよろしくお願いします。すみません、ありがとうございました。
*関根さん
ありがとうございます。食料主権宣言都市というのを、ぜひやっていただければと思うんですけれども。
*鈴木さん
たぶん、出来ないと思うんですけれども、ご指導また、よろしくお願いします。
*関根さん
よろしくお願いします。みどりの食料システム戦略の一環で自治体がオーガニックビレッジ宣言をやっていたり、有機農業への転換に対しては補助金が出るようになっていたりします。それから全国農業会議所が行なっているアンケートによると、慣行農業をやっている方、農薬・化学肥料を使っている方も、実は約半数が、技術を学べて、しかも売り先がちゃんと確保されるのであれば、有機農業に転換したいと10年前に答えているんですね。おそらく今、もっとその割合が高まっているんじゃないかと思います。新規就農する方はもっと高くって、有機をやる方が今3割くらいいて、やっぱり条件があれば、つまり技術が学べて販売先があれば、有機にぜひチャレンジしたいという方が6割くらい、合わせると9割を超えるんですよね。なので、本当にちゃんと行政なり、国も自治体も県もですけど、しっかり後押しが出来れば、そして協同組合とか産消提携みたいな、こういう市民のネットワーク、消費者もつながるような仕組みが出来ると、結構、上手く歯車が回りだすような気もしたりしています。
私はこの間、東京のあきる野市とか、それから千葉県の八街市とか、かなり都市近郊の開けた平らな農地ですね、すごく恵まれているところを視察に行ったんですけども、実はかなり耕作放棄地が多くて、農家は高齢化していて驚きました。こんな首都圏のお膝元で、平らなところで、道路交通網もあるのにこういう状況かと思って、愕然としました。でも、そこでは生活協同組合さんが社会福祉法人を作ったりして、そこで特別支援学校と連携したりとか、B型の福祉法人とかと連携する中で、働く場所や学習の場を生み出して、そこに生協の組合員さんで、かなり高齢の方も多いんですけども、農作業をしに来るんですね。まったく農家の方ではないんですが、もう何年も農業をやっているのでプロみたいな感じで、それで特別支援学校の生徒さんに教えたりとか、そんなこともされてたので、そういう新しい農業が始まっていて、まさに鈴木さんが取り組まれようとしているようなことと通じるのかなと思いました。
*鈴木さん
ありがとうございます。頭の中ではあるんですけど、なかなか体も1つなんで動けないというところがあるので、また色々ご指導、よろしくお願いいたします。どうもすみません、貴重な時間をありがとうございました。
*関根さん
ありがとうございます。はい、それではそろそろ時間になるんですけれども、チャットの方のご質問はよろしいですか、皆さん。はい、それではちょうど時間になりましたので、本当にあっという間で、まだまだお話したいことはあるんですけれども、ここで常務理事の池上さんの方から、今回の感想と閉会の挨拶、そして次回の予告をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
*池上さん
はい、どうもありがとうございます。皆さま、活発な議論をしていただきまして、大変ありがとうございました。こういうですね、試み、編著者と語るというテーマと、その中には、一般向けの解説書みたいなものの中で、執筆者同士が話をするということもあまりないような気がするんですね。研究書だと事前に研究会をやったりしますから、当然、議論をして、1つの本にしようとするわけですけれども、そういうちょっと性質が違う本で、執筆者同士が直接、意見を交わすっていうことが、ちょっと新しい試みとして、これからスタートしていけるのかなと、そういう点にちょっと意義を感じた次第です。
で、欲張ると、編著者と読者がもう少し、意見を交わせるっていうことが出来るともっといいなとは思ってるんですが、なかなかそういう時間的な余裕とかもあるので、ちょっと難しい面もあるんですけれども、そういう方向をもう少し目指していきたいなというふうに考えております。今回はさらに加えて、出版社からも顔を出していただいて、少しご説明いただいたということで、こういうつながりをですね、色んな形で作っていくというのが大事なのかなというふうに感じた次第です。
今日はいくつかの中で、キーワードとか、私の印象に残った言葉だけ、かいつまんで申し上げますと、やはり地域って焦点になっているなという気がしたんですね。生業を生活範囲としての地域とか、県レベルでの地域とか、多少こう空間的な広がりの大小があるかと思いますけれども、住んでいる暮らしの場としての地域、そこには作っている人も食べる人もいるわけですから、その全体としてそれを、どういうふうにこれからもっていくのかということがすごく大事になっているんだろうなと。
で、久保田さんだったと思うんですが、従事者がハッピーになると言ったかな、ハッピーになれるような暮らし、地域をどう作っていけるのかということが、若者を地域に残していくという面からも非常に重要だろうというふうに今、感じた次第です。つまり、これはたしか宇田さんだったと思うんですが、人との関わりですね。人との関わりをできるだけ密にしていける、そういう社会を作っていく。それがちょっと迂遠なんだけれども、結果的には人を地域に残していくという課題を解決していくことにつながっていくのかなというように思います。そういう取り組みをですね、農家とか農村、地域の実像を見えるようにして、それを発信していくことがすごく大事なんだろうと感じた次第です。最後に、中学校の家庭科で持続可能なということが、あんまり厳密な検討なしに、乱発されているというのは、非常に危機感を感じる次第ですけれども、そういうところも今後、少し考えていきたいなというふうに思いました。
あとですね、鈴木さんでしたかね、議員さんとの議論の中にもありましたが、特にヨーロッパが盛んなんですが、これはたぶん関根さんの方がお詳しいと思うんですけれども、都市食料政策協定、都市が中心になって色んな事業者とか、生産者とかを含めた、消費者も含めてますけれどもね、食料政策協定を作っていくという、そういう取り組みがあって、それをいくつかの都市を中心にしたネットワークが出来ているんですよね。で、そういう中に、日本だとあまり出てこない社会的な不公正であるとか、それからフードシステムで働く人たちの貧困という問題とかね、そういうことをいかに解決していくかということも、きちんと課題として含めているんですよ。そういうものも使った、ぜひ、食料主権宣言都市というのを日本で始めていけたらいいなというふうに今日、思いました。すごく強い、そういう方向に向けた色んな企画も考えてみたいなというふうに今、感じた次第でございます。
で、一番最初に少しだけスライドで申し上げましたが、次回は第1巻、『ほんとうのグローバリゼーションってなに?』というのをテーマにして、共編者の1人である斎藤博嗣さん、じねん道という一反百姓を標ぼうしておられるFFPJの常務理事と、それから田村さん、所属は上智大学でしたっけ、田村梨花さんですね、田村梨花さんを対談者にして、あとはもう1人、私ですね、が司会役というような形で対談をしたいと思っております。まだ具体的な内容をよく考えておりませんが、今日の運営を参考にして、また第1巻の少し大きな枠組み、グローバリゼーションという枠組みから検討するということになりますので、ぜひ参加をしていただければというふうに思います。特に対談の中で中心に置きたいと思っていますのは、希望の部分で、教育の話を中心にして議論していきたいと思っております。皆さまがたの再度のご参加をお願いできればありがたいと思います。以上をもちまして本日の編著者対談シリーズ第1回を終了したいというふうに思います。どうもありがとうございました。